2021-01-01から1年間の記事一覧

『Japonism and Jazz』/『A Little Jazz Mass』

今年は「合唱とジャズ」という関心が微妙に継続していた気がしている。主には森田花央里に興味を持ったからではあるが、他にも『A Little Jazz Mass』を聴いたことや、ライブ配信で聴いた東京混声合唱団の演奏会での、栗田妙子の作品も関係している。 最初か…

未来に伝える三善晃の世界Ⅲ(2)

tooth-o.hatenablog.com 休憩を挟んでカルテット・アマービレの演奏になった。 『弦楽四重奏曲第1番』 CDを2枚持っているが、確か矢代秋雄が「こんな年寄臭い曲を書いてちゃだめだ」とか何とか言っていた記憶があり、身構えながら聴き始めた。が、一体感のあ…

未来に伝える三善晃の世界Ⅲ(1)

「三善音楽を未来に伝える会」主催のコンサート「未来に伝える三善晃の世界Ⅲ」を聴きに行った。このシリーズは興味はありつつスケジュールが立てられずにいたのだが、今回は都合をつけることができた。 令和3年12月10日(金) 東京オペラシティリサイタルホ…

『五つのラメント』(廣瀬量平)

言うまでもない男声合唱の名曲。自分も男声合唱から合唱に入ったので、廣瀬量平の『五つのラメント』には憧れのような気持ちがある。当時『Volga』を聴いて圧倒されたことを覚えている。 音域やダイナミクスの幅が広く、トーンクラスターやグリッサンドの一…

『ごびらっふの独白』(高嶋みどり『青いメッセージ』)

初めて『青いメッセージ』を聴いたのは高校生の頃で、特に終曲『ごびらっふの独白』については強い印象を受けた。と言いつつも言葉の分からない音楽を聴きなれない時分のことで、蛙語の部分など訳が分からないという気分でいた記憶がある。 この曲と限らず学…

『波の墓』(荻久保和明『縄文』)

荻久保和明の『縄文』は『透明』『曙』までで満足で、『行進』は空騒ぎ、『波の墓』はだるい、という印象だった。今回三善晃の『詩篇』を繰り返し聴いた際、詩の確認のためにCD『縄文/荻久保和明 作品集』のブックレットを取り出し、ついでなので荻久保和明…

『シャボン玉』メモ

tooth-o.hatenablog.com tooth-o.hatenablog.com 『虹とリンゴ』第3曲。 以前にも触れたが、曲集のタイトルにある「虹」の言葉は『原初』の「影の虹」にしか出てきていない。シャボン玉の虹色が連想されていると見るべきだろう。 詩は、宗左近には見えない「…

『詩篇』について

『混声合唱と管弦楽のための 詩篇』の楽章構成について、ナクソス『NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズ「三善晃」』では次のように表記している。 Ⅰ.はじめのはじめに・雲 Ⅱ.はじめのないはじめ・天体 Ⅲ.はじめのあるはじめ・夕映え Ⅳ.おわりおないは…

『混声合唱とピアノのための 4つの小品』

何度か取り上げているハルモニア・アンサンブルのCD『地球へのバラード』には、委嘱初演の作品が4曲収録されている。この4曲の楽譜は表題のタイトルで1冊にまとまって出版された。内容は 『三味線草・壱』(作詩 竹久夢二/作曲 森田花央里) 『胡蝶』(作詩…

三枝木宏行「《レクィエム》から《詩篇》へ」

つい最近のことだが『NEW COMPOSER』の Vol.15 が出ており(電子書籍のみ)、上記タイトルの記事を読むために購入した。前回の tooth-o.hatenablog.comの続きと見られるこの記事は、『プロターズ』を起点とした70年代後半の創作の流れ、宗左近の詩集『縄文』…

三枝木宏行「三善晃《レクィエム》テクスト再読」

表題の記事を読むために、日本現代音楽協会『NEW COMPOSER Vol.13』というのを購入した。作曲家、演奏家、評論家等による、専門家にとって面白い会誌のようなものだと思うが、ただの物好きでしかない自分にはおよその気分くらいしか分からない。 ともあれ目…

室内合唱団Vox Gaudiosa 第24回定期演奏会

2021年10月23日 第一生命ホール ミクローシュ・コチャール追悼ステージ~ハンガリーの作品を集めて~ 『秋の風景』(Veljo Tormis) 『2つの秋田民謡』(松下耕) 『地球へのバラード』(三善晃) コンサートどころか都内に入ること自体いつ以来か、と思い…

『ノエシス』の解説文について

1997年に三善晃の『ノエシス』、武満徹『トゥイル・バイ・トワイライト』、吉松隆『朱鷺によせる哀歌』、松村禎三『ピアノ協奏曲第2番』というCDが出ており、当時の興味としては三善晃の管弦楽曲に松村禎三のピアノ協奏曲、ということで購入した。このブック…

『混声合唱と2台のピアノのための 交聲詩 海』(2)

tooth-o.hatenablog.com 詩の大枠は、人が世界に向き合い生きることの原型と、太陽が昇り沈む海の姿の照応、ということになるのだが、ここまでの読み方は実際には三善晃の楽曲からの反映を含んでいる。というのは、1・2と3・4と5・6の組がこれほどまで同じ形…

『混声合唱と2台のピアノのための 交聲詩 海』(1)

『交聲詩 海』を演奏することは以前は大変なことだったと思うのだが、youtube を見ていても思いの外盛んに演奏されている。自分ではそれほど好きな訳でもないのだが、それでいてこの曲を軽んじるような発言を見かけると腹立たしかったりもする。ともあれ、こ…

『三味線草』(森田花央里)

森田花央里の名前を知ったのはハルモニア・アンサンブルのCD『地球へのバラード』からで、収録されている委嘱作品4曲の内の1曲が『三味線草・壱』だった。そもそも購入時に聴きたかったのが『地球へのバラード』だったので、この時は曲よりもブックレットの…

『夏』メモ

tooth-o.hatenablog.com 引き続き『夏』について。 ピアノの前奏から。歌曲、あるいは童謡のような雰囲気と、どことなく疲れたような感覚がある。4分の4拍子、中庸のテンポ、八分音符を基調としたリズム、調性の安定感が要因として考えられる。 「ルララ」の…

『原初』メモ(2)

tooth-o.hatenablog.com の続き。 場面が切り替わって「空の夢ですか」から。それまでは臨時記号が♭も♯も多数現れるものの調号はなかったところから、♯6個の嬰へ長調に変わる。 この部分はほぼ無伴奏となる。途中で入るピアノは冒頭の変形だが、全て3連符に…

『原初』メモ(1)

何度も触れている、『虹とリンゴ』の第1曲について、気づくことや思うことなど。 2曲目『夏』で「宇宙のあちら」とあるように、「あちら」と「こちら」という関係が宗左近の詩には何度も現れ、また三善晃も『詩篇』以来常に触れてきた。冒頭「ゆめ」がメゾソ…

『じゅうにつき』の楽譜を買った

『混声合唱曲集 じゅうにつき』(1993)は『ぼく』『あなた』に続く、谷川俊太郎のひらがな長編詩集『みみをすます』の詩による作品で、この3曲はみな合唱連盟虹の会のために書かれた。楽譜の前書きによれた 作曲が遅れ、12曲のうち何曲かは3群・12声部の混…

『虹とリンゴ』の演奏と録音

gaia2001.com このコンサートで『虹とリンゴ』を聴いたことが、このブログを始めたきっかけの一つだった。以来、この曲のことはずっと気になり続けている。とはいえ案外演奏されておらず、実際の演奏を聴いたのがこのときを含めて2回、所有するCDが4枚に止ま…

三善晃「弧の墜つるところ」

私見だが、合唱人が作曲家「三善晃」の本質に迫るために必ず触れておかなくてはならないのが、「王孫不帰」~「オデコのこいつ」~「レクイエム」の流れである。丘山万里子先生の以下の文章がその助けになるだろう。https://t.co/0Hwg9f2Yb6 — Takuya Yokoya…

『平行世界、飛行ねこの沈黙』(2)

tooth-o.hatenablog.com 正直に言えば、前回書いた3つの演奏を聴いてもこの曲がそれほど面白いとは思わなかった。演奏の好悪もその中での良し悪しという話でしかない。これは単にこの曲がつまらないのか、十分に魅力的な演奏がまだ出てきていないということ…

『平行世界、飛行ねこの沈黙』(増井哲太郎)

昨年のにっぽんの合唱オンライン・ティービーで色々と聴いた際に、この曲はタイトルのインパクトが強かったため印象に残っていた。最近になって新しめの曲も聴いてみるかと思い、動画を探し、楽譜も購入してみた。youtube の演奏がそれほど面白いと感じられ…

『私が歌う理由』(三宅悠太『二つの「理由」』)

三善晃の後に書いてこれか、と初手から批判的な気分があり良くないのだが、三宅悠太の『私が歌う理由』は近年動画などでもよく見かけるようになった。 楽譜の前書きがカワイ出版のサイトで読める。 三宅悠太:無伴奏混声合唱のための「二つの『理由』」 | 楽…

『三つの時刻』について

男声合唱とピアノのための『三つの時刻』は1963年、三善晃が30歳の時の作品となる。早稲田大学グリークラブの委嘱による作曲者の初めての男声合唱曲だったが、楽譜の前書きによれば初演時のピアノのパート譜が紛失、後の1986年、初演時のレコードから採譜し…

『男声合唱組曲 雨』

あるところで『雨』の話題を見かけたのだが、それが tooth-o.hatenablog.com この時の演奏のことだった。『縄文土偶』の新しい演奏が欲しかったこともありこの演奏会のCDを入手していたので、久しぶりに聴いてみた。 それで思ったのだが、この『雨』というの…

『再会』(『光る砂漠』)

この曲の練習をする夢を見た、というだけの話なのだが。学生時代の合唱団で、どこともつかないホテルで合宿をしている風だった。夢なので順を追って物事が起きるのでもないのだが、目が覚めても『再会』の合わせをしている場面と、勇んで練習場に入ったら女…

『月の光 その一』

『月夜三唱』はなかなか馴染めないでいた曲。CD『ヴォイスオブエンジェル3 三善晃作品集』を所持しており聴くこと自体はいつでもできたのだが、もう一つイメージが明確にならない感じがあった。 「月の光 その一」の詩は多田武彦も『中原中也の詩から』の終…

『ほたるは星になった』『落石』(『光る砂漠』)

萩原英彦『光る砂漠』の第5曲『ほたるは星になった』と第6曲『落石』は、共に夜の詩によっている。2つの詩に関連があるのかは知らないが、作曲者にはこれらを並べた意図があったのではないだろうか。 『光る砂漠』の楽譜には自作の解説が「作曲者のことば」…