『Japonism and Jazz』/『A Little Jazz Mass』

今年は「合唱とジャズ」という関心が微妙に継続していた気がしている。主には森田花央里に興味を持ったからではあるが、他にも『A Little Jazz Mass』を聴いたことや、ライブ配信で聴いた東京混声合唱団の演奏会での、栗田妙子の作品も関係している。

最初から脱線するが、森田のピアノと栗田のピアノの違いを面白く感じた。個人的な印象として、森田花央里にとって一旦鳴らした音は動かしようがなく次の音を拘束する条件となるが、栗田妙子の場合は弾いた音がもやのようにふわふわとして、それをまとめ上げて次の音にする、というように感じた。

話を戻す。森田花央里が『Japonism and Jazz』について自信を漂わせているのを見て興味を持ち、動画を視聴したり楽譜を買ったりした。

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楽譜の前書きに「ジャズ・ミュージシャンには、楽譜に囚われることなく、ぜひ自身の磨いた技術を存分に披露していただきたい」とあり、ピアノに自由度を与える必然と思うが合唱は割合シンプルで、ユニゾンの部分も多い。が、簡素な中で民謡・童謡とジャズの二重のスタイルを表現するため、音の配置に非常に神経が使われている印象がある。

個別には、「さくら」、「赤とんぼ」は普通に合唱の曲とも思え、「最上川舟歌」「耳切り坊主」「鶴崎踊り」にジャズとしての印象がはっきり感じられる。「八木節」には何というか、合唱とジャズという方面とは別種のダサさを個人的には感じる。6曲中では「耳切り坊主」を特に好んでいる。自分にとっては何となく松村禎三の『ギリシャに寄せる二つの子守唄』と近い。

今年は Bob Chilcott の『A Little Jazz Mass』も聴いた。結構な実力派の団体で、しっかりした演奏ではあったのだが、聴きながらかなり戸惑った。リズムも鋭くダイナミクスも明瞭だが、声や歌い回しがどことなくルネサンス頃の宗教音楽のように感じられたのだった。そのように演奏されてみると、合唱はどうも単調と言うか単純と言うか、物足りなさを感じた。

その後動画でいくつかの演奏を聴いてみたのだが、あまり面白いとは感じなかった。合唱団やえ山組と森田花央里による演奏があり、聴いた中では良い演奏と思ったのだが。

www.youtube.comこれもこれで、退屈はしないものの面白くも感じない。

雑な話として、最初に挙げた演奏はミサらしいがジャズらしくない、やえ山組の演奏はジャズらしいがミサらしくない、ということのように思う。または、日本的な事情として多くの合唱団は宗教的な背景がないので宗教音楽であることとジャズであることはともにスタイルの問題であって、そのどちらか一方を選ぶか、中途半端な折衷になるしかないのだろう。