2016-01-01から1年間の記事一覧

『戦いの日日』(『嫁ぐ娘に』)

最近になって、ようやく『嫁ぐ娘に』の楽譜を購入した。私的な感覚として、「嫁ぐ」の語感がすでに何となく受け付けないところがある。 『戦いの日日』はソロが多用されているけれども、これがどういうことなのか、というのが気になり出した。冒頭と結尾はナ…

『船乗り』と『選ばれた場所』ではと書こうと思ったら『あやつり人形劇場』にも

半音の下降が長く続く部分がある。『あやつり人形劇場』が頭から漏れたのはこれがバスだけの動きで、他の2曲のように平行に動くパートがなく音としての印象が薄かったため。 この動きが何なのか考えてみたが、多分「階段を下りる」ということだろう。「階段…

『遊星ひとつ』と3と4

『遊星ひとつ』は3拍子で始まり4拍子で終わる。 『INITIAL CALL』はまどろむようなハミングによる前半から、「友だちおるかい」の呼びかけに入る。この時の言葉は、自ら発するというよりはどこかから聞こえてくるもののように感じられる。 これに対して、『…

エンディング、アンコール、クロージング

『君をのせて』は合唱のアレンジでも結構歌われてるようだが、正直、曲としては退屈だと思う。歌詞も、「さあ出かけよう」つまりまだ出発してもいない。空疎だ。 実際のところエンディングに求められるのはこの中身のなさで、この期に及んでひと悶着あっても…

言葉と旋律の間

歌詞と旋律は単に合ってれば優れているということでもなく、作曲家はその間に齟齬を設けて、音と言葉の間の距離感に意味を込めたりする。林光のメロディーはどことなく調子はずれな感じがあって、そこに生じる違和感に批評的な感覚が仕込まれている。この感…

『虹とリンゴ』の楽譜を見返していて

どうも、三連符に意味が与えられてるような気がする。 『夏』の中間あたりが一番はっきりしていて、「宇宙のあちらでは/何かのお祭りの最中でしょうか」の所では、左手が三連符・六連符で動くのに対して、合唱とピアノの右手が八分音符単位の動きとなってい…

『王孫不帰』続き

http://d.hatena.ne.jp/tooth-o/20160510/1462887424 から。 つまり、「丁東」が翁に、「きりはたり」が媼に対応している。これらを、翁の演技、媼の演技として見ることができるのではないか。 「きりはたり」「丁東」は曲のかなり早い段階で出てくるが、演…

『王孫不帰』の擬音など

『王孫不帰』の詩の最後の2連については、三善晃の言も他の解説もちょっと変な気がしている。 「丁東」「東東」は物を打つ音、というのであれば、これは木を樵る音ではないか、と思う。「きりはたり」が機織りの音なのはいいとして、「ちやう」は和鋏の音で…

『夜と谺』の「怖い」印象は何だったのか

楽譜を見てみると、「夜が真昼」の所は長三和音の平行移動が多用されている。あのぎらついた響きは、一つにはこの音の使い方によるのだろう。 ところで、演奏会当日に購入したPVDのCDを聴いてみたが、『宇宙への手紙』の演奏には当日の『夜と谺』に似た感触…

『鳥』

この曲は『地球へのバラード』の中でもっとも危うい局面なんだが。

『王孫不帰』

ダイナミクスしかない演奏、という印象だった。もちろん音は正しく出ているのだろう。そこから何を思いようもない演奏だと感じた。 『王孫不帰』の演奏はこうした事態になりがちなのではないか。 実演に接するのは2回目でしかないのでほとんど思いつきのよう…

『その日−August 6−』

こんなことになると思ったよ、という演奏。 演奏の水準はまあ高い。指揮者の音に対する感覚も特異なものがあるのだと思う。 この演奏で、「苦しみという名で呼ぶことすらできぬ苦しみ」はだれのものだったか。苦しみに共感しようがない、ということが大事な…

『オデコのこいつ』

今この曲を演奏する意味って何だろうね、という気はした。今の人間が70年前後の文脈でものを考える必要って? 「反戦」だから何でもいい、になっていないか? というわけで、意識してただ美しさだけを聴こう、と思った。実際、美しい演奏だったと思う。そし…

『虹とリンゴ』

当日のお目当てではあったが、『夜と谺』の演奏があまりに圧倒的で、後のことが不安になりながら待ち構えていた。 前ステージほど突き詰めた感じではないが、良い演奏だったと思う。耳を聾する音量の後で、比較ではなく別の音楽であることを示せていた。 ア…

『夜と谺』

正直なところ、この曲は甘く見ていた。カメラータ・トウキョウのCDで聴いており、楽譜も入手してはいたが、勝手な思い入れを会場に持ち込んだあげく、結局自分には関係なかった、という感覚を持つのではないかと思っていた。 樹の会の演奏は、恐ろしいものだ…

『レクィエム』

おそらく今回の企画の目玉だっただろうこのステージから。ピアノリダクション版と言えどもこの曲が演奏されるというのは大変なことだ。 楽譜を買ったのでちょっと中を見てみたが、容易には手が出せない。記法の一部は扱いをきっちり詰めないと困りそうな様子…

Tokyo Cantat 2016 やまと うたの血脈 Ⅶ 大和の和は 平和の和 そして太平〜三善 晃からの伝言〜

また大分日が空いてしまった。 今年のカンタートは三善晃の戦争にまつわる合唱曲を集めたコンサートをやるということで、曲目を見ればまああきれるばかり。 5/3(火・祝)5:00PM開演(4:30PM開場) すみだトリフォニーホール 大ホール 2群の女声合唱、1群の…