『シャボン玉』メモ

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『虹とリンゴ』第3曲。

  • 以前にも触れたが、曲集のタイトルにある「虹」の言葉は『原初』の「影の虹」にしか出てきていない。シャボン玉の虹色が連想されていると見るべきだろう。
  • 詩は、宗左近には見えない「あちら」に向けた呼びかけという枠組み。
  • 『原初』で触れたメゾとアルトの関係はこの冒頭部で明らかにされる。ここでユニゾンとなるところと分かれるところ、また八分音符と3連符、ピアノの5連符、6連符等はこれまでに書いてきた象徴的な意味合いを持って精密に書かれている。
  • 無伴奏となる「静かな嘘のように」の部分は七部に分かれ、リズムだけ異なる同じ音の旋律を入りをずらしながら歌う。ここは『原初』の「光の魚が」「影の鳥が」や『夏』の「生きているのにもう」を思い起こさせるとともに、雲の音画的な表現になっている。
  • 「静かな嘘」とは宗左近にとっての世界のことで、それが雲のようなものである、つまり宗左近の見る世界のリアリティを伝えようとしている。
  • 突然のように「眞っ赤なリンゴ」が歌われる。以降の合唱や、ピアノによる高温の細かい音は「朝焼け」の表現。5連符は「こちら」から「あちら」への呼びかけであることを示す。
  • 「眞っ赤なリンゴ」のような「朝焼け」ということで、「あちら」側のリアリティを問いかけている。
  • 「眞っ赤な」の繰り返しは昇っていく朝日の表現。この部分は特に鮮やかな音楽になっている。
  • 次の「ルルル」等は『縄文連禱』の終結部に通じる表現。「宇宙」は「明日の宇宙の黒い眠り」で、そこに地球があることは「希望」である、ということ。「こちら」の地球は『夏』の通り「焼きリンゴ」となってしまっている。
  • 「夢は浮いていますか」は「雲は浮いていますか」と同時に『原初』冒頭の再現。『原初』で7連符だったピアノの音型は十六分音符で書かれている。さらに「あなたの中で」では「空の夢ですか」を回想する。
  • それまでの論理の結果として、「本当の死」が詩人にとっての「夢」であることが歌われる。5連符により、「本当の死」が「あちら」での死であることが表される。
  • 「秋は少しも答えはしないのです」も「雲は浮いていますか」の変形だが、上行する旋律が言葉に応じて下降に転じる。
  • 「美しいシャボン玉」は『原初』の「光の魚」「影の鳥」と同様の表現。そこからピアノの5連符の動きが入り、高音部で拍を外しながらシャボン玉の漂うような音が弾かれる。
  • 合唱で膨らむシャボン玉が描かれ、引き継ぐピアノによりそれが高く浮き上がっていく様が表現される。