2009-01-01から1年間の記事一覧

『交聲詩曲 波』は雑な作りに聞こえる部分もある

表情のはっきりしたブロックが結構強引に接続されている感じがする。これを演奏でどうにかするのは大変そうで、『三善晃の音楽Ⅲ』は何とかしていたがその分各部分の表現はまだ何かができそうに思えた。 多分「遠くの眼の遠く」で言う「遠く」という感覚が重…

『レクイエム』は他の作品とはやっぱり違う

また三善の『レクイエム』を聴いている。 楽器と言葉のそれぞれが存在感を持ち、それを統御するような視点をもたない、多頭の怪物のような曲だ。これに比べると三善の他のオーケストラ作品はすっきりしたものだと思う。

耕友会による『鳥のために』

CD『光をまもるために 耕友会コンサート Vol.5』を購入。『鳥のために』から聴いているが、やっかいな曲という感じがする。 第1ステージであることや録音の問題などについて留保は必要なのだが、どのように演奏すればいいかよく分からないか、迷っている…

『三善晃の音楽Ⅲ』の『その日―August6―』

『三善晃の音楽Ⅲ』では『その日―August6―』はMIYOSHI AKIRA Chorus、合唱団響と樹の会、耕友会の合唱、寺嶋陸也のピアノによる演奏となっている。三善晃の75歳を記念する演奏会の中で、この曲は近作の披露という意味合いがあっただろう。このCDについて…

『その日―August6―』の2つの演奏

『その日―August6―』の演奏が、カメラータ・トウキョウ『三善晃の音楽Ⅲ』とフォンテック『木とともに 人とともに』の2枚のCDに収録されている。 『三善晃の音楽Ⅲ』の方がしっかりした演奏なのだが、東混の声を客体的に扱うようなスタンスがこの曲にはそれ…

『虹とリンゴ』のクラスター

『虹とリンゴ』では合唱がクラスターを鳴らし、その後をピアノが音階や分散和音的な動きで受ける形が冒頭と最後の部分に現れるが、これは調性感の失われたクラスターからピアノが音階を取り出すことで分光を表現しているのだろう。

『響層Ⅰ』

Ensenble PVDのCD『響層Ⅰ』を購入。 『優しき歌・第二』(柴田南雄) 『五つの日本民謡』(三善晃) 『芭蕉の俳句によるプロジェクション』(湯浅譲二) 柴田と湯浅は東混の、三善は晋友会のCDがあったが、いずれも容易に演奏できないので、新たな音源が…

『ピアノ淡彩画帖/松谷翠』

これもカメラータ・トウキョウのCD。三善晃『オマージュ』 八村義夫『彼岸花の幻想』 松村禎三『ギリシャに寄せる二つの子守歌』 武満徹『ピアノ・ディスタンス』 吉松隆『プレイアデス舞曲集』より フローラル・ダンス アップル・シード・ダンス 水によせ…

『デ・ラ・マーサ:プラテーロと私/兼古隆雄』

三善晃のファンなので、現在だとフォンテックや日本伝統文化振興財団、カメラータ・トウキョウ等には大変お世話になっている。カメラータ・トウキョウについてはそれとは別に好きなレーベルで、多分そうなったのはこのCDのため。 そもそもは図書館で見かけ…

『交聲詩曲 波』からの連想

『交聲詩曲 波』を聴いて連想したのが、「ずいずいずっころばし」、黒人霊歌、新実徳英と高嶋みどり、『大地讃頌』だった。 「ずいずいずっころばし」は童声合唱の旋律から。黒人霊歌はその童声合唱の先行と合いの手的に入る混声合唱のリズム感のためで、新…

『五つの願い』

過去の曲と前に書いた『五つの願い』だが、『春だから』と『空に小鳥がいなくなった日』は思いがけない音が鳴って楽しい。 一方で、やっぱりこの詩は古くさいかな、という印象は変わらない。「電話」と「忘れた歌」というつなぎ方はもう無意味だし、「みんな…

混声3部合唱とピアノのための組曲『クレーの絵本 第1集』

フォンテックのCD『木とともに 人とともに』を購入したので。 児童合唱でもこんなの歌えるのかというような曲を作っている三善晃だが、この曲は中学生のクラス合唱なども視野にいれたものなのだろうが、特に音域の面であまり厳しくないようだ。 そのためた…

『彼岸花の幻想』(八村義夫)

季節には少し遅れたが。 八村義夫の作品の中では圧倒的に聴きやすい一曲。 ずっとヤバげな音が鳴り続けるために、終盤に現れるニ長調の部分まで何か不穏な幻のように感じる。

「未来線」「希望線」

『交聲詩曲 波』の詩に「未来線」・「希望線」という言葉が出てくる。 「何?」という感じの造語だが、『海』を前提に置くならこれも分かる。 『海』の構図を「くるめきでる水平線」の向こうにもう一つ配置するなら、元の位置からはその向こうで「ふるさとよ…

『田中瑤子の1・2・3』を聴いて驚いたこと

新実徳英が2台ピアノのステージに『夕闇の中』という曲を用意しているのだが、この4曲目『夕闇の無音』というのが、聴いていたら『マドリガルⅡ』の『挽歌』だった。どちらかの流用なのかと思って初演について見てみると、『夕闇の中』はこのコンサートの日…

『海』と『波』

『交聲詩 海』の楽譜を最近になって購入した。詩は、前書きで三善晃が「海の隠喩」といっているように、朝の水平線から夕方の水平線までが生きている間に対応するようになっている。 夕日の沈む水平線を「宇宙の目覚め」「本当の死」として、その向こうは『…

「夢の炎の炎の花」

『交聲詩曲 波』の前に『交聲詩 海』のことを少し。 「夢の炎の炎の花」の「夢」と「炎」を、『虹とリンゴ』の「夢」と「焼きリンゴ」に結びつけてみると、水平線は『原初』の宇宙の目覚め、また『シャボン玉』の「本当の死」につながる。

CD購入

『三善 晃の音楽 Ⅱ/円環と交差〜岡田博美(pf)プレイズ 三善 晃』 『三善 晃の音楽 Ⅲ 合唱作品集〜2008年 三善 晃 作品展より』 『田中瑤子の1・2・3』 昨年から三善晃のCDが一気に充実して、もちろん嬉しいのだが、そこにどうしても不安と寂しさが混…

『三善晃・谷川俊太郎 作品集 木とともに 人とともに』

フォンテックからも三善晃の合唱のCDが出るようだ。 『三善晃・谷川俊太郎 作品集 木とともに 人とともに』 「クレーの絵本第1集」混声三部とピアノのための組曲 「やわらかいいのち三章」混声合唱とピアノのための 「その日―August6― 」混声合唱とピアノ…

『田中瑤子の1・2・3』

『田中瑤子の1・2・3』というCDが出ていたのだが、近所のCD屋をまわっても売っていないので、先ほど注文した。 ピアニストの田中瑶子と作曲家新実徳英、林光、三善晃による1984年の演奏会のライブ録音とのこと。以下の曲目は発売記念ブログ(http…

『三善 晃の音楽 II/円環と交差〜岡田博美(pf)プレイズ 三善 晃』・『 三善 晃の音楽 III 合唱作品集〜2008年 三善 晃 作品展より』

カメラータ・トウキョウから、三善晃のCDが2枚出る。 三善 晃の音楽 Ⅱ/円環と交差〜岡田博美(pf)プレイズ 三善 晃 ピアノのための「円環と交差」 ピアノ曲集「音の栞」 2台のピアノのための「響象Ⅰ・Ⅱ」 三善 晃の音楽 Ⅲ 合唱作品集〜2008年 三善 晃 …

『シャボン玉』の最後の部分

「美しいシャボン玉のように」のところ。ピアノが拍を外してシャボン玉の漂う様子を描く。アンジェリカのCDは録音のせいもあるけれど、もう一つ冴えない演奏になっていると思う。

季節感がおかしい

夏の終わりが近くなると『沈黙の名』を聴かないといけないような気分になるのだが、「夏よ 今年も」というわけでむしろ夏の初めの歌なはずで、もともと季節感がずれているのだ。 『麦藁帽子』もなぜか春の曲のような気がしていたり、何か感覚が狂っているの…

『沈黙の名』(『地球へのバラード』の2曲目)

いつ聴いても奇妙に引き込まれてしまう曲。 時間の感覚が狂う。「夏よ 娘たちに教えるがよい」のあたりからうとうとして、20分くらいたったかな、と思ったらまだ「名付けられぬものの名は」のところだった。 「それらの小さなやさしい名が/彼女らを愛に誘…

『シャボン玉』の冒頭の旋律

「夢は浮いていますか」の音型は、冒頭の「雲は浮いていますか」の変形であるのと同時に『原初』の「夢の空ですか」と結びついたものでもあって、逆にみると「雲は浮いていますか」自体が「夢の空ですか」の変形、ということになる。

『駅』(『四つの秋の歌』)

まだ八月になったばかりなのに、夏の終わりの歌。 「山すそのあたりに〜近づいてきた」のところは少女の視点を想像しているところで、「次に運ばれてくるものを待っている」気分が表れている。で、これがあとの「こうして」という言葉で受け取られる。

『歌集 田園に死す』

夏の本当に暑い時期になると、三善晃の曲が聴きたい、という気分になる。そういうときに、思い浮かべているのはこの曲か『沈黙の名』のような気がする。 近所で夏祭りがあったりするので、ふと「かくれんぼの鬼とかれざるまま」のあとのピアノのことを思った…

『Finale』(『白く』の4曲目)

詩の後半部分。 「衰えた時」が「過ぎてゆく」のに対して、「地上の婚礼」が「おくれないやうにと」後を追うようにして過ぎていく、という風に読んだのだと思う。急速なテンポに変化するのはそのためだろう。

つたったったたん

『手紙』(『鳥のために』の1曲目)の「唇は」と歌うところで出てくるこのリズムがどうも唐突に思えて、これは何だろう、と楽譜をめくってみた。『アンナという鳥』の「白樺の」、「あしたから」、「落ちてきて」のところ、さらに『木』の「鉈は振り下ろさ…

『五柳五酒』

CD『夜と谺〜三善晃 合唱の世界Ⅱ』の混声合唱版しか聴いたことがない。清水敬一の詩の朗読がいまいちだし女声の合の手も説明過剰な感じがして、そんなには聴かない。三善晃の治作編曲はつねに厄介だ。 元の歌曲の楽譜を持っていて、やはりこちらの方がよさ…