『夏』メモ

 

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引き続き『夏』について。

  • ピアノの前奏から。歌曲、あるいは童謡のような雰囲気と、どことなく疲れたような感覚がある。4分の4拍子、中庸のテンポ、八分音符を基調としたリズム、調性の安定感が要因として考えられる。
  • 「ルララ」の所で合唱が増三和音となり、不穏さが印象付けられる。
  • 前半部は変ホ長調ト長調を行き来する形の転調が繰り返される。
  • 所々で微妙な違和感を残す音があり、可愛らしい言葉の裏で恐ろしい印象をのこす。「かかっています」「まぶしてあります」「光のリボン」など。個人的には、描かれる光が「鋭すぎる」というように感じられる。
  • 「光のリボン」で3連符が現れる。『原初』で取り上げた意味合いとともに、この曲の後半では恐ろしさの刻印のように取り上げられる。
  • 「結んであります」からピアノで5連符によるつなぎが入る。次のハ長調の部分では合唱はユニゾンになる。
  • 2分割リズムと3分割リズムという観点はこの部分のピアノから見て取れる。基本的には合唱とピアノの右手が八分音符のリズムで歌い、左手が3連符、6連符で動き続ける。
  • 次の部分は簡素な音から始まるが、3連符に入って激しさを増し、増三和音に行き着く。勢いがピアノに引き継がれ、「リボン」の音型が強調される。次の「生きているのにもう」のカノンも「リボン」の音型が拡張されたものとなっている。これは最初に入るピアノでも強調される。
  • 「生きているのにもう焦げている死体」というのは言ってしまえば頓智のようなもので、蝉の鳴き声は常に聞こえているのに実際に見かけるのは地面に裏返っている死骸ばかり、ということ。裏返っている、ということが「神さま」への「お頼み」につながる。
  • 各パートは8分の10拍子だが、メゾソプラノだけタイミングをずらされている。蝉の声が重なるイメージ。
  • ト短調に転調する。これは前半部のト長調同主調で、そこから次の変ホ長調への復帰が導かれる。

『夏』は数年前にある程度訳が分かったような気になっていたが、改めて見直すとやはり難しい。書き連ねたようなことを積み上げてもあまり曲に近づけた気がしない。