『三味線草』(森田花央里)

森田花央里の名前を知ったのはハルモニア・アンサンブルのCD『地球へのバラード』からで、収録されている委嘱作品4曲の内の1曲が『三味線草・壱』だった。そもそも購入時に聴きたかったのが『地球へのバラード』だったので、この時は曲よりもブックレットの解説の方が印象が強かった。切実さばかりが伝わってくるような文章で、とはいえその切実さを曲の中に追う気にもならなかった。

全曲の演奏を聴いたのが、CANTUS ANIMAE の第22回演奏会だった。

CANTUS ANIMAE第22回演奏会「この曲、聴いたことありますか?!」 - tooth-o’s diary

CANTUS ANIMAE と合唱団響の『田園に死す』など - tooth-o’s diary

あまりCANTUS ANIMAE に好意的でない書き方になったが、とにかく森田花央里のピアノが圧倒的であり、演奏も演奏前のトークも上に書いた解説と自然につながる、痛切な印象の残るものだった。が、このときの関心はピアノの演奏であって、曲自体の印象はそれほど強くはなかった。全体的な気分だけが何となく残っている、というくらいか。

この曲との付き合いなどはこの程度だったのだが、近ごろ"Japonism and Jazz" の話題を見かけることが多くあり、そちらを聴き、また作曲者が合唱、またジャズについて語るのも目にする内に、『三味線草』ももう少し聴いてみるか、という気になってきた。

ここ数日ほど、CANTUS ANIMAEの演奏も含め、動画で繰り返し聴いてみている。やはりこの切実さにあまり近づきたい気持ちにはならない。というか身も蓋もなく、美味しいところだけつまみ食いしたい。

演奏することを想像すると、あの作曲者のピアノを前に合唱はどうすればいいのか、と悩んでしまう。合唱は普通それほど機敏にはなれないし、密な表現を目指せば歌い手の自由さが引き換えになる。

楽譜は今のところ『4つの小品』に含まれる『三味線草・壱』だけを見ている。全曲の楽譜を発注したが、とりあえず気づいたこと。

  • 4小節、8小節、16小節といったまとまりでできているようだが、177小節からのピアノが休みになる部分で1小節加わっている。
  • 306小節~313小節は曲の冒頭の変形で、「忘草」と「思草」を結び付けている。