『原初』メモ(2)

 

tooth-o.hatenablog.com

の続き。

  • 場面が切り替わって「空の夢ですか」から。それまでは臨時記号が♭も♯も多数現れるものの調号はなかったところから、♯6個の嬰へ長調に変わる。
  • この部分はほぼ無伴奏となる。途中で入るピアノは冒頭の変形だが、全て3連符になっている。divisi が多く、4声から6声で進行する。
  • ピアノが入った後の「光の」から「花が」でmfからmpに変化する部分は非常に効果的。
  • ピアノに導かれて「海の夢ですか」に入る。ここからはさらに変ト長調で♭が6個となり、「空の夢ですか」に対応する旋律が歌われる。ここから転調が続き、♭が3個、1個、0、と変化する。
  • ピアノは八分音符単位で動く。これは先の3連符との関連で、「空の夢~」と「海の夢~」とが調号も含め対照されていることを示す。
  • 途切れなく入る「夢の」から、冒頭の「夢」の変形で始まり、「~ですか」の4つの詩行を歌う。前半部の回想と同時に、次の部分の開始となっている。
  • ピアノが5連符で弾き始め、細かい3連符の動きに入る。ここから変拍子が続き、ピアノは途中に八分音符も入るが、その時は小節自体が3拍子となっている。
  • この先の部分も含めて、変拍子は2分割・3分割リズムによる詩句の逐語的のようにも見える。
  • それまで合唱は滑らかな旋律が主体だったが、アクセント・スタッカートの付された鋭い音の部分になる。声部も多数に分かれていたものが同じ音を鳴らす部分が増える。
  • 再度冒頭の「夢」の形。中間部の導入に対応する形による締め括りと終盤への導入。
  • 「はい」「ええ」「そうです」の間に入るピアノは、「ええ」の前で7連符による冒頭の変形、「そうです」の前は「海の夢ですか」の部分の変形と見られる。
  • 「ひとつぶ」の部分で、「こちら」と「あちら」の分離が起こると考えることができるかも知れない。ここでは「ひと」で合唱とピアノが重なって上行し、ピアノがさらに順次進行で上がっていく一方、合唱が「つぶ」で下降する。この八分音符の並びが、合唱では旗が2つずつつながっているが、ピアノは3つつなげてある。ダイナミクスもピアノがクレッシェンド、合唱がディミヌエンドしている。
  • 最後の「空のように海のように浮かべて」の部分、ソプラノが「空」も「海」もなく「のように」だけを歌う奇妙な書き方をされている。
  • 最後から3小節目のピアノに5連符が現れる。三善晃が初演時の文章に「その一粒に、まだ夢の残映は宿っている?」と書いているが、この5連符はその意味で書かれていると思える。

一通り見返してみて、象徴性が徹底的に織り込まれていることを改めて確認した。これは『夏の散乱』の「19458689」のように、素材からそのように選ばれ、作り込まれているのではないかと思う。