2019-01-01から1年間の記事一覧

「多田武彦試論」を読んでなぜか三善晃の話をする

nihonshijin.blog2.fc2.comこちらの記事が13回で完結となった。多数の資料に当たりながら書かれた文章に対して、自分はただ乗りするだけとはなるが、読みながら思ったことなどを書いてみたい。3つから4つほどの記事になると思うが、書き切れるかどうか今のと…

『廃墟から』(信長貴富)

柏葉会合唱団の演奏会を聴きに行ったのだった。 東京大学柏葉会合唱団 第66回定期演奏会 Three Themes of Life and Love (Daniel Elder) 無伴奏混声合唱のために 廃墟から (信長貴富) 混声合唱とピアノのための やがて悲しみが (市原俊明) 混声合唱組…

『柳河』(多田武彦『柳河風俗詩』)

1 「聴く人のための男声合唱ガイド」の方の「多田武彦試論」 nihonshijin.blog2.fc2.com をお見かけして、自分でも多田武彦について考えてみたりしている。で、「日本男声合唱史研究室」の方が『柳河』についての記事を公開されていたのを思い出した。 male-…

『じゆびれえしよん』

信長貴富の曲にはまるで愛着がないのだが、お江戸コラリアーずの第11回演奏会のCDを購入したので『無伴奏男声合唱曲集 じゆびれえしよん』も聴いたのだった。気に食うところも食わないところもありつつ、それなりに趣深い曲が続いていたところに終曲、表題曲…

『永遠の光』に使われている詩について

tooth-o.hatenablog.com tooth-o.hatenablog.com 『永遠の光』に取り上げられている宗左近の詩もやっかいな内容を含んでいるが、曲ではカットされている。結果的に何も言っていない言葉が並ぶことにはなっている。 「人の生みうる唯一つの無限」等々の先に次…

CANTUS ANIMAE と合唱団響の『田園に死す』など

OMPのCDでしか聴いたことのなかった『歌集 田園に死す』を1年の内に2回、生で聴くことができた。そこで、この曲のやっかいさについても色々と思うことがあった。 1回目はCANTUS ANIMAE。 tooth-o.hatenablog.com前ステージが『三味線草』だったが、森田花央…

合唱団響 演奏会2019

2019年9月8日 サントリーホール大ホール ”Sestina - Lagrime d'amante al sepolcro dell'amata" (Claudio Monteverdi) Walzer "Liebeslieder" Op.52(Johannes Brahms) 『歌集 田園に死す』(三善晃) 『交聲詩 海』(三善晃) 台風で帰れなくなるのでは…

『さようなら』

武満徹の『さようなら』を歌ったことがあったのだが、何だかよく分からない内に練習からステージまで終わってしまった。詩も曲も印象が明瞭にならず、謎の歌というのが当時の印象だった。そしてしばらく前のことになるが、改めて詩を読み返してその奇妙さに…

合唱団お江戸コラリアーず 第18回演奏会

令和元年8月17日 東京芸術劇場コンサートホール Sechs Lieder für vierstimmigen Männerchor op.33 ( Robert Schumann ) 男声合唱のための『王孫不帰』(三善晃) 合唱のためのコンポジション第6番『男声合唱のためのコンポジション』(間宮芳生) アラカル…

『南海譜』

新実徳英は『白いうた 青いうた』から多数の編曲集を出していて、所属している男声合唱の団体でステージを持つことになった際に、それらの中からこの『南海譜』を歌うことになった。 『白いうた 青いうた』の中では『就職』『自転車でにげる』『われもこう』…

『虹とリンゴ』

『夏の散乱』の初演時に、三善晃が次のように書いている。 炎を、炎の内側から見なければならないとき、生死は灼熱のなかで一瞬交差し、この世では死ねない死と生きられない生となって離別する。宗さんは炎のなかから「明るい塋」を透視した。「現」だった。…

『風に寄せて』

尾形敏幸の『風に寄せて その一』は高校時代の思い出の曲で、今でも嫌いではないが、年数が経過する内、いつの間にか馴染んでいた『その二』や『その五』の方に今は好みが移ってきた。『その一』の明るさと翳りにはどうにも「高校生が好きになる感じの曲」と…

『鷗』の話(2)

tooth-o.hatenablog.com 前回『解釈』を補強するかも知れないと書いたが、重点が『解釈』からずれていく面がある。主眼は旧制三高のところにあり、施設の配置や朝の歌、夕べの歌のあたりが関連付けられるならそれなりに説得的になる一方、そうでなければ「そ…

『王孫不帰』のことを少し

法政大学アリオンコールのサイト( http://arionchor.com/history/cn47/pg801.html )には、『王孫不帰』について三善晃の書いた文章に加えて詩の解説が載せられている。「住の江」と「太郎」から浦島太郎が導き出されるのは調べてみると納得のいくところで…

『レクイエム』ピアノリダクション版について少し

tooth-o.hatenablog.com オーケストラとピアノでは音量から機能性から違うわけで、同じようには演奏できない。合唱の低音はオーケストラには埋もれてしまうかも知れないがピアノであればおおよそ聴かせることができるだろう。言葉も聞こえたらいいな、から普…

『三つの夜想』の詩について

『三つの夜想』の3篇の詩について少し見てみる。 『淡いものに』 「淡いもの」については、詩の終わりに現れる「ひらかれた目に 淡く/次の くもが」からまずは雲、そして冒頭に戻って「”真実”のような雲が」と繋がって、”真実”を指す。 「罪」という言葉が…

『鷗』の話(1)

清水敬一還暦記念演奏会の折に購入した『合唱指揮者という生き方』に、合唱をする人の間では木下牧子の曲などで知られる三好達治の詩『鷗』に触れているところがある。 学徒動員される直前の旧制高校生たちを前に、講演をする役が回ってきたことがあるそうで…

GIOVANNI閉店

常に懐具合と置き場所に悩まされることから、CDはあまり購入しないし、よってGIOVANNIもそれほど頻繁に利用もしなかった。とはいえ、特に邦人作品のCDの入手先は非常に限られており、いざ「あの曲が聴きたい」、「楽譜は持ってるけどどんな曲だろう」という…

野田暉行のいくつかの曲について

ヴィクターが『日本合唱曲全集』を売り出したあたりだったか、三善晃の『変化嘆詠』に八村義夫の『THE OUTSIDER Ⅰ/Ⅱ』が収録されいるというので購入した『現代合唱曲選集2』に『死者の書』も収められていたのが、野田暉行を気にするようになったきっかけだ…

『青春』(野田暉行)

昔はヴィクターから出ていた合唱曲のシリーズが近所の図書館に多数あり、野田暉行のCDもその中にあったので、一応聴いたことはあった。当時は野田暉行の名前に思うところもなかったが、多少印象に残るくらいには聴いたのだろう。 当時は、あまり好きでないな…

清水敬一還暦記念演奏会

令和元年6月1日 東京オペラシティコンサートホールタケミツメモリアル 指揮 清水敬一 ピアノ 川添文 清水史 出演団体 松原混声合唱団 湘南市民コール 町田市民合唱団 女性コーラス渚 早稲田大学コール・フリューゲル 曲目 カンタータ『人間の顔』(Francis P…

信長貴富を好まないこと

好きでないので何か言えるほど聴いていないのだが。 信長貴富の曲で一番最初に聴いたのは『ヒスイ』だったと思う。「透明な憂鬱感」みたいな感じは、ある程度特徴的なものとして出てきたのは木下牧子あたりではないかと思っているが、扱う音は違うもののその…

海外の作品について書くのは気後れする

日本人の曲では割合気ままに思いついたことを書き散らしているけれど、海外の曲だと同じようにはできない感じがある。 マックス・レーガーの曲について思っていたことを書いてみたのだが、 tooth-o.hatenablog.com ヨブ記のテキストと最後の審判をつなげてし…

『Mein Odem ist schwach』(Max Reger)

トウキョウ・カンタートでは多少珍しいCDを売っていることがあり、今回はアルノルト・シェーンベルク合唱団によるマックス・レーガーのCDを購入した。『三つのモテット』が収録されていて、以前に触れたことがある曲なので気になったのだった。『Mein Odem i…

トウキョウ・カンタートのこと

何ごともなくゴールデンウィークが終わってしまった! というのが嫌なときにはトウキョウ・カンタートを覗いてみる気分になる。トウキョウ・カンタートでは以前の三善晃特集のように時々気になる曲目の多いコンサートがあり、そのような年は少し気張って聴き…

三善晃入門?

少し前のことだが、たまたまそのような文字の並びを見かけた。自分などそれほどマニアックでもなく、何か特別な知見があるわけでもないが、とにもかくにも延々と三善晃の曲を聴き続けてはきたので、少しくらい挙げてみてもいいかと思い、考えてみた。 「入門…

東京混声合唱団 第249回定期演奏会

以前に東京混声合唱団の演奏会に行ったのは、もう10年以上前になる。日曜日のコンサートということで都合がつけられたのと、ピツェッティ、マルタンといった名前に惹かれて聴きに行くことにした。 東京混声合唱団 第249回定期演奏会 指揮:三ツ橋敬子 ハープ…

『また昼に』

同じ詩に書かれた曲を比べてみるということをするなら、小林秀雄の『優しき歌』と柴田南雄の『優しき歌・第二』を並べるのも面白いかも知れない。 立原道造の詩によるこの2つの曲集には、『また落葉林で』と『また昼に』の2つの詩が共通して扱われているが、…

『甃のうへ』3曲

三好達治の『甃のうへ』には多数の作曲家が曲を書いていて、こちらのデータ http://www.geocities.jp/scaffale00410/index.htm では11人もいるらしい。その中で聴いたり歌ったりしたことがあるのは萩原英彦、多田武彦、荻久保和明の3曲ほど。 萩原英彦の『甃…

CANTUS ANIMAE第22回演奏会「この曲、聴いたことありますか?!」

tooth-o.hatenablog.com などと書いていたが、強引に都合をつけて聴いてきた。 平成31年2月2日 第一生命ホール 『お天道様・ねこ・プラタナス・ぼく』 芥川也寸志 『三味線草』 森田花央里 『歌集 田園に死す』 三善晃 『不完全な死体』 信長貴富 どのステー…