2024-01-01から1年間の記事一覧

三善晃と友情の主題(『流れる水のように』)

『うたの森』の収録された『流れる水のように』を歌う機会があり、歌詞を読み音を取りながら思ったのだが、友情を裏切った、ということが三善晃の課題の起点だったのではないだろうか。 課題と書いたが、罪と言い換えられるかも知れない。それがある、という…

『はる』

今年は谷川俊太郎の「はる」の詩による曲を2つ歌っている。一つは『この星の上で』の1曲目で、もう一つが上田真樹『そのあと』の、やはり1曲目。よく知られた詩なので他にもいくらでもあるだろうと思い youtube で探したところ、鈴木輝昭、信長貴富、松本望…

『月夜三唱』について

『月夜三唱』の曲のピアノが、月の光とそれに照らされた光景を描いている、と言うことは一応できるだろう。合唱も含めてオクターブの動きが頻繁に現れるが、特にピアノの高音部で弾かれる時には特に光のイメージが残る。 これは聴けば分かることではあるが、…

合唱団やえ山組 第12回演奏会

2024年9月29日(日) 14:00~ 第一生命ホール 『小さな目』 『月夜三唱』 『遊星ひとつ』 『五つの童画』 色々と動画で視聴することの多かった合唱団のコンサート。『小さな目』は聴く機会が少なく、『月夜三唱』は時々演奏されており、『遊星ひとつ』と『五つ…

田中信昭の逝去に

田中信昭が9月12日に亡くなった。8月の東京混声合唱団のコンサートから間がなく驚いたが、96歳という年齢を思えば仕方ないというか、最後まで演奏活動を続けられたのは幸福なことだったのではないかと思う。 直接の接点はほとんどなかった。学生の頃に練習を…

この夏のこと

今年は私生活に大きな変化があり、思いがけずできた時間の空きを合唱団の活動に使うことになった。その一部として『交聲詩 海』を歌う機会もあった。実のところ自分で歌うと思ったことがなく、楽譜もそれほど細かく見てはこなかった。 実際に音取りをしてみ…

『縄文連禱』について(3)

tooth-o.hatenablog.com 構想がどのようにして成立したかは想像することしかできないが、ともあれ詩に対して三善晃は舞台作品的な、劇的な場を考えることになった。あるいは、作品全体を一種のフィクションの形に設えた、と言えるかもしれない。 音楽を聴く…

『縄文連禱』について(2)

OMPや豊中混声の演奏なども聴き返しつつ、まだ『縄文土偶』のことを考えている。 当たり前のことに気付くのに長い年月がかかった、と思うのだが、詩の核心は「縄文の花 いつまでも」なのだから、この曲の目論見はその願いを聴き手に共感させること、さらには…

『縄文連禱』について(1)

tooth-o.hatenablog.com 今回久しぶりに聴くことのできた『縄文連禱』について。宗左近の詩による曲でもあり、昨年と限らず三善晃の作品を中心としたコンサートは幾つも企画されてきている中、この曲を各にする形も考えられそうなものだが、むしろ合唱団を主…

vocalconsort initium ; 8th concert ──邦人合唱音楽の深遠

2024年5月31日 19:15~ 豊洲シビックセンターホール Soupir ( M. ラヴェル / C. ゴットヴァルト 詩: S. マラルメ) 嗟嘆(といき) (近藤譲 詩: S. マラルメ 訳詩: 上田敏) ささやきュビズム (成清翠) 3つの詩/死 (真鍋尚之 詩: J. アイヒェンドルフ、R.M. リル…

「一瞬の望見」(4)

tooth-o.hatenablog.com しかし、果たされることのない願望は、もう、そのまま私の基質のようになってしまった。私そのものが、飢餓に似合ってしまった。そして飢餓の質は、「古典」から遠いところにいる。路の迷走を私は閲した。 ここの書き方は、内容を音…

「一瞬の望見」(3)

tooth-o.hatenablog.com たとえば生と死は、そのいずれかをえらぶことのできる二つの事柄ではなくなった。 幼時、病上がりの日に、自由学園校舎裏で、老齢のロバの脚元にしゃがんでいた。そうしてかくれ、心に刺の声を聴きながら、子供には由々しい背徳の時…

CANTUS ANIMAE 第28回演奏会 祈りのかたち vol.2 三善晃作品展 ―戦争と・・・人間らしさと・・・海と・・・―(2)

tooth-o.hatenablog.com 一度トウキョウ・カンタートで『王孫不帰』『オデコのこいつ』『レクイエム』を並べることをしており、自分が聴くのは抜粋ながら今回が2度目になる。当時もそのことにそれほど感心はせず、とはいえ滅多にない機会なので良しとしてお…

CANTUS ANIMAE 第28回演奏会 祈りのかたち vol.2 三善晃作品展 ―戦争と・・・人間らしさと・・・海と・・・―(1)

2024年5月12日 14:30~ 第一生命ホール 男声合唱のための「王孫不帰」より Ⅰ(男声) こどものための合唱組曲「オデコのこいつ」より ゆめ(女声) 「レクィエム」[ピアノ・リダクション版]より Ⅲ 混声合唱のための「黒人霊歌集」より Joshua fit the Battle o…

「一瞬の望見」(2)

tooth-o.hatenablog.com 「感性はいつも、馴れ合いそうで危険だった」と「共犯の巧みな結託を怖れ」はおおよそ同じ意味だろう。「看視するもの」が、「馴れ合い」「共犯」の対象なのか、それとも自分の「馴れ合い」「共犯」を「看視するもの」ということか、…

東京六大学混声合唱連盟 第66回定期演奏会

2024年5月4日 16:00~ 東京芸術劇場 コンサートホール 2日続けて4時間かかる演奏会を聴いて疲れてしまった。新型コロナの関係でダメージの残る中頑張っていたが、最後に『時代』を聴かされたので大減点。 慶應義塾大学混声合唱団楽友会 西村朗の『そよぐ幻影…

Tokyo Cantat 2024 合唱音楽の生誕の季(とき)~「水のいのち」から「新作」へ

2024年5月3日 17:00~ すみだトリフォニーホール 大ホール 混声合唱組曲「水のいのち」より「雨」「水たまり」「海」「海よ」(髙田三郎 Combinir di Corista) 混声合唱組曲「幼年連祷」より 「花」「憧れ」「喪失」(新実徳英 混声合唱団鈴優会) 追分節考…

Point de Vue vol.17

2024年4月30日(火) 19:00~ 東京文化会館小ホール 歌い方と句切れのエチュード(金田望) 抒情と移ろい -声に寄せて-(武澤陽介) 虚空はるかに ー蓮の花・・・・(佐藤岳晶) マドリガル(新垣隆) カミングズの詩によるラブソング(森山智宏) 《カルミ…

「一瞬の望見」(1)

『遠方より無へ』の最初に載せられている、1970年のものとなているこの文章は、初出一覧に寄ればレコード『三善晃の音楽』のために書かれたもの。 最初に萩原朔太郎の「五月」の詩があるが、このことについては以前触れたことがある。 tooth-o.hatenablog.co…

シャボン玉の割れる音

bungo618.hatenablog.com 三善晃の『シャボン玉』(『虹とリンゴ』)に関して、 シャボン玉が割れるような音がしたけどあれは詩のどこの部分なんだろう? と上の記事で触れられているのは、詩の最終行、曲の中でも終盤の「まるで美しいシャボン玉のように」…

『魁響の譜』(日本フィルハーモニー交響楽団 第758回東京定期演奏会)

『魁響の譜』を演奏するというので、日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会を聴きに行った。 日本フィルハーモニー交響楽団 第758回東京定期演奏会 2024年3月23日 14:00 『魁響の譜』(三善晃) 『ヴァイオリン協奏曲第1番 op.35』(シマノフスキ) 『交響曲…

『大小』(上田真樹『そのあと』)

上田真樹の『そのあと』を練習することになり、今のところ一通りさらった段階となっている。 『そのあと』の楽譜の序文には「このところ、なんだか世の中がおかしなことになってきている。」とあり、その問題意識は特に2曲目『大小』と3曲目『十と百に寄せて…

混声合唱曲集『木とともに 人とともに』

この曲集はそれぞれ個別の経緯で書かれた3つの作品を集めたもので、3曲まとめて演奏されることもあるが1曲だけを取り上げて歌われることも多い。楽譜の序文には《谷川さんと、すべての「いのち」のために》との題がつけられ、谷川俊太郎の詩による作品である…