東京混声合唱団 第249回定期演奏会

以前に東京混声合唱団の演奏会に行ったのは、もう10年以上前になる。日曜日のコンサートということで都合がつけられたのと、ピツェッティ、マルタンといった名前に惹かれて聴きに行くことにした。

 

東京混声合唱団 第249回定期演奏会

指揮:三ツ橋敬子

ハープ:景山梨乃(第2ステージ)

  1. 『三つの合唱作品』(Ildebrando Pizzetti)
  2. ゲーテの「ファウスト」第2部より天使の合唱』(Franz Liszt
  3. 『Melodies in Ravel』(上田真樹 委嘱作品初演)
  4. 『二重合唱のためのミサ曲』(Frank Martin)

ピツェッティのこの曲は、もともとそういう曲なのか演奏のせいなのか分からないが、いつも捉えどころのない感じがある。東京混声合唱団がそれほど緻密な作り込みをする団ではないこともあり、やはりぼんやりした曲という印象は変わらなかった。

ピアノの音楽に親しみがなく、リストについてもほとんど何も知らないが、今日の曲は面白く聴いた。声の力が生きる曲で、ハープも美しく、良いステージになったと思う。

上田真樹の新曲はラヴェルのピアノやオーケストラなどの曲をアレンジして1曲の合唱曲に仕上げるというものだった。響きの多様さを合唱に落とし込むところにエチュード的な関心と楽しさはあるが、タイトルの割にラヴェルの旋律はそれぞれの曲のインデックスとしてしか意味がない印象はあった。総じて「この曲のあの響きがこんな風に合唱で鳴らされるのか」というところが魅力だったが、正直なところラヴェルが聴きたいときにはラヴェルを聴くので別に結構、くらいの感想を持った。

マルタンのミサは合唱の名曲の一つで、演奏頻度も相応にあるが、実演を聴くのはやはり随分久しぶりだった。二つに分かれた合唱団はどちらもやや非力な感があり、特にソプラノは弱音があまり美しくなく不安定で、またバスは片方は変に主張が強くもう一方はもう一つ声が前に出ないところがあり、配置も含めて二重合唱としての面白みが欠けた何となくの八部合唱、という感じがあった。さらに決め所で合唱が声の都合で拍をごまかしたり、指揮者もポイントの前で意味があるのかないのか分からない拍を打つようなところがあって、大事なところをぴたりと出られないということが数回あった。そのような問題はありながらも、やはり名曲は名曲で、良いものを聴いたとは思えた。

東京混声合唱団の果たす役割は重要かつ独自のもので、多少の満たされなさには目を瞑っても支援していきたいという気持ちはある。一度くらいは委嘱活動の支援で会費を払ってみても良いと思いもするのだが、今年の名前を見て見送ることを決めた。