野田暉行のいくつかの曲について

ヴィクターが『日本合唱曲全集』を売り出したあたりだったか、三善晃の『変化嘆詠』に八村義夫の『THE OUTSIDER Ⅰ/Ⅱ』が収録されいるというので購入した『現代合唱曲選集2』に『死者の書』も収められていたのが、野田暉行を気にするようになったきっかけだったと思う。これには前段があり、学生時代の所属団体が所蔵していた『死者の書』の楽譜をパラパラ捲って眺めて、「何だこれは」と思っていたのだった。当時の団のライブラリは他にも湯浅譲二松村禎三、細川敏夫などの、鍵盤があっても譜読みさえ難しいような曲が多数揃っていて、その中のひとつだった。『死者の書』は、ぱっと聴いたところではなにやらおどろおどろしいが、馴染んでくると透明感やひんやりした感覚が曲の印象として残ってくる。

これ以前には、図書館で借りた『青春』と『有明の海』のCDを聴いていたが、当時はそれほど関心を持たなかった。『青春』の「はたらけ はたらけ」や「なにですかー」くらい、あとは『有明の海』で「有明の海よ」がかすかに記憶に残る程度で、色々借りてみた中の一つでしかなかった。今も改めて聴きたいかというとそれほどでもない気がする。

死者の書』を聴いていたあたりは日本の作曲家に関する本をいくつか捲ってみたりしていた時期で、三善晃から池内友次郎、矢代秋雄を経由するような成り行きで、野田暉行にも少し興味がなくもない、という感じになっていた。時期、ということではこの時期カメラータ・トウキョウのCDを良く買っていたのだが、ブックレットに挟まっているアンケート葉書を何枚か送ると会員登録されて、たまにCDを無料で送ってもらえたりした。終了したのももう随分前のことだが、当時のリストの中に野田暉行の『ピアノ協奏曲』のCDがあったので頼んでみた。書いている通り間合いの遠い興味なのであまりきちんと聴いていないのだが、今回取り出してみると漠然と持っていた印象に似たところ、異なるところがあって面白かった。

こうして回りくどく入手したCD以前にも、実は野田のオーケストラ作品の録音を所持していた。DENONの「日本の現代音楽」というシリーズがあり、その中の『松村禎三:オーケストラのための前奏曲、他』というCDに野田暉行の『コラール交響曲』が収録されていたのだった。が、このCDを購入したのは元はと言えば八村義夫の『ラ・フォリア―ひとつの音に世界を見、ひとつの曲に自らを聞く』で挙げられていた松村禎三の『前奏曲』を聴いてみようと思ったからで、加えて三善晃の『オーケストラのための協奏曲』も入っているので満足してしまい、他の収録曲はほとんど聴いていなかった。

 いかにきちんと聴いていないかばかりだが、とりあえずここまで。気が向いたら一部の器楽作品について触れてみることにしたい。