『王孫不帰』

ダイナミクスしかない演奏、という印象だった。もちろん音は正しく出ているのだろう。そこから何を思いようもない演奏だと感じた。
『王孫不帰』の演奏はこうした事態になりがちなのではないか。
実演に接するのは2回目でしかないのでほとんど思いつきのようなものだが、演奏者も実はこの曲が何なのか分かっていないのではないか。分からないまま征服欲のようなもので取り組んでいるだけということはないか。
演奏する側も聴く側も「よく分からない」と思ったまま、語られた言葉を曲にラベルとして貼り付け、演奏者はそれを曲の意味として押し付け、聴く側もその貼り付けられたラベルに感動しているのでは、という疑念を今回は感じた。演奏者はこの曲をもっと「分からせよう」としなければならないだろう。