『レクィエム』

おそらく今回の企画の目玉だっただろうこのステージから。ピアノリダクション版と言えどもこの曲が演奏されるというのは大変なことだ。
楽譜を買ったのでちょっと中を見てみたが、容易には手が出せない。記法の一部は扱いをきっちり詰めないと困りそうな様子。
入場の時から悪い予感があった。第1ステージの『夜と谺』は大規模な曲でかなりの人数がおり、ここで音量が飽和する感覚は既にあった。というのに、山台に密集する異様な人数(後で聞いたところでは170人程もいたらしい)。そして2台のピアノは、下手側の蓋が小さく開いている。
東混のCDはこれほどの人数では演奏していないはずで、何がというのではないが大丈夫なのか、と不安になった。
演奏が始まる。1階の、自分の席から、という限定ではあるが、ピアノがきちんと聞こえない。吠え猛る合唱がただの圧力として存在するばかり。
聴きながら、ただただどういうことなのか考えていた。多分、『ゴリラのジジ』と逆なのだろう。『ゴリラのジジ』の混声版では、男声がリズムの上で居場所を失って拍の上にただ乗っているところがある、と感じていた。『レクィエム』の原曲はオーケストラと合わせることから、例えばリズムなら打楽器により与えられ、合唱だけでリズムを成り立たせる必要がない。ピアノ版も合唱はおそらく大きく手を入れてはおらず、であればピアノがオーケストラのになっていた機能を受け持つ必要があり、しかし合唱の人数と音量によりそれができていなかったのではないか。
結局、苦行というほどでもないが物足りない印象のまま演奏は終わった。
まあ、良いのだろう。アマチュアの団体による『レクィエム』の演奏が、これによって始まったということだろう。演奏の困難さを考えれば時間はかかるだろうが、実演が少しずつ積み重ねられていくことでどのように演奏すればよいかが確かめられていくだろう。