『夜と谺』

正直なところ、この曲は甘く見ていた。カメラータ・トウキョウのCDで聴いており、楽譜も入手してはいたが、勝手な思い入れを会場に持ち込んだあげく、結局自分には関係なかった、という感覚を持つのではないかと思っていた。
樹の会の演奏は、恐ろしいものだった。冒頭、女声の和音が暴力的な音を響かせる。グロい三和音、などというものを聞かされるなど、思ってみたこともなかった。新しい局面ごとに音響の恐ろしい印象が強まっていく。
終盤のかすれたような歌声が力尽きたのかそういう技術なのか分からない。ただそのような声が適切に感じられた。
途轍もない演奏だった。最初のステージにしてこれほどのものを聴かされるとは、思ってもみなかった。