Tokyo Cantat 2024 合唱音楽の生誕の季(とき)~「水のいのち」から「新作」へ

2024年5月3日 17:00~

すみだトリフォニーホール 大ホール

新実徳英の進行で、昨年亡くなった西村朗の追悼という面のある演奏会。最初に黙祷を行った。

水のいのち』では普段思う「髙田三郎らしさ」とは異なる方向からこの曲の思いがけない表情を聴かされた。『幼年連祷』も、聴きなれたというか聴き飽きたと思っていた曲に対して、こんな凄い音が鳴っていたのかと思い知らされる演奏。『追分節考』は女声の鳴らす和音のクリアさが素晴らしかった。

ここまでが第1部、次の4曲が第2部で八ヶ岳ミュージックセミナーの委嘱作品とのこと。これらも大変レベルの高い演奏だったのだが、並べられると作曲家という人たちのナイーブさばかりが印象に残ってしまった。

第3部、寺島陸也は「永訣の朝」が中心だったのだが詩で泣かされる部分があり、その方向の延長は何をしても蛇足の感があった。その点西村朗は上手くやっていたのだなと思った。『敦盛』はその西村の作品だったが、響きの複雑さの割にさしたる内容はないという印象で、藤井宏樹はあまり相性が良くなかったのではないか。最後はコンサートのタイトル通りの新作だったが、正直なところいつになったら面白くなるのだろうと思っている内に終わってしまった。

ともあれ、これだけの曲が全て高水準の演奏で揃うという、想像を絶するような演奏会だった。新しい合唱作品がどのようにして生まれてきたかという企画の意図も良かった。