曲集『街路灯』のこと

 

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「乖離」というのも日頃使わない言葉だが、これは曲集で扱われた詩に共通して現れるものでもある。

  • 「なくしてしまったふるさと」(『マルメロ』)
  • 「幼年を失くしたもの」(『雲』)
  • 「ふたたび/めぐりあえなくなった日」(『オルゴール』)

失われた過去の時間と、そこから隔たった現在、という図が繰り返される。三善晃は楽譜の序文「私の意」で「深い創」「多量の血」というのだが、『マルメロ』にあるように、過去が美しいからこそ、そこからの隔たりが痛みをもたらす。

ここまでは、それぞれの詩は類似しているとも見える。が、第3曲『おんな』を挟んで内容が反転する。「風がそっとときほぐすと」(『マルメロ』)、「おまえのなかにある/海を/ひらいておくれ」(『雲』)に対し、『オルゴール』は「ふっと息をふきかけると/消えてしまう 虹を/もうおしまいなさい」という。前者が「開く」のに対し、後者は「閉じる」詩になっている。『街路灯』については、これらの3つとも異なっているように読める。戻れないながらも過去は現在へとつながるものとされている。

『おんな』だけが他の4曲とも違ったものとして、曲集の中央に置かれている。本当はこの詩と曲を読み解かないとならないのだが、今のところどうのように触れて良いか分からないでいる。

その他に手掛かりになりそうなのが3分割と2分割のリズムで、八分音符と三連符や三拍子系の拍子が言葉とどのように対応しているかを見てみる必要があるだろう。