CD『三善晃の世界 CANTUS ANIMAE×Choeur Chene×Combinir di Corista×MODOKI 』

4つの合唱団によるジョイントコンサートがCD化されたので購入した。近場での開催であれば聴きに行ったのだが。

正直なところを言えば選曲にそれほど魅力を感じておらず、演奏の技術的な負担についてはチャレンジングでも曲目としては守りに入ったという印象で、時節柄とは言えコンサートよりはイベントあるいはセレモニーという感があった。ついでに言えば他の録音を所持していない曲は一つもないので、改めて手に入れる必要もあまり感じていなかった。

曲目と演奏団体は次の通り。

  • 『嫁ぐ娘に』 MODOKI
  • 『やわらかいいのち三章』 Combinir di Corista
  • 『五つの童画』 Choeur Chene
  • 『交聲詩 海』 CANTUS ANIMAE
  • 合同演奏『生きる』『であい』
  • アンコール『鳥』

言わずと知れた、という曲が並んでおり、『やわらかいいのち三章』が21世紀の曲ではあるがこれも演奏頻度の低い曲ではない。『であい』はむしろ歌われ過ぎでは、くらいに思う。

冒頭からぶつくさ言ったものの、実際に聴いてみると買って良かったと思える。楽曲の、これまで気にしていなかったり演奏上意識的に扱われてはいなかったような要素が所々で聞こえてくる。

それぞれの演奏について触れてみる。MODOKI による『嫁ぐ娘に』は従来の演奏に比べて歌詞の明晰な表現を目指しているように感じた。また、多数現れるソロは多くの演奏でただ歌っているというか声を大きく出しているという風であり、この点は先行する優れた演奏でもあまり変わりがないのだが、この演奏ではそれよりも一歩踏み込もうとしているようだった。

『やわらかいいのち三章』は練習の困難な時期にも関わらず技術的にも安定しており、このCDで最も興味を引かれる演奏だった。これについては別に触れることにしたい。

Choeur Chene の『五つの童画』は歌詞の無いハミングなどの声部に存在感があり、旋律表現としてもしっかりしている。これは伸ばしているだけの音でも同様で、歌に意識を引きつけ続ける。また、旋律表現の充実は『どんぐりのコマ』のポリフォニーにも聞かれる。

CANTUS ANIMAE の『交聲詩 海』についてはややぼやけた印象を持った。全体にやや非力で表現の意図もあまり感じられない。敢えて「海」らしさを見ようとするならピアノの描く海の中で溺れながら歌っている、といったところ。ただ、そうした中でも最後の C がそれなりに出るのは時代が変わった感はある。

栗山文昭のお話の後から合同演奏となるが、こういう形で歌われると「この演奏」という聴き方にあまりならない。「良かったね」で済ませてしまいたくなるというか。実力派の団体による合同演奏なので安心して聴けるしわざわざ粗を探す必要もないし、解釈を云々する意味も感じない。

全体的には、『やわらかいいのち三章』を除けばファーストチョイスにはならないが、どこかしら気になる所のある演奏が収録されたCDになっている。活動の困難な時期に、高い演奏の水準を保っていることを示した演奏だと思う。