『五つの童画』メモ

  • 完全四度/完全五度の強調は見て取りやすい。例えば『ほら貝の笛』を除いて全ての曲が空虚五度になっており、『ほら貝の笛』についても最後の音は D-A-E すなわち二つの完全五度を重ねたものと見ることができる。
  • この他にも、各曲のセクションの始めや終わりなどに空虚五度が度々現れる。これは特に、『風見鳥』や『ほら貝の笛』で多く見られる。空虚五度が繰り返される分、それ以外の部分の完全四度や完全五度を類似と見て良いかは分かりづらい。
  • 各曲の最後の音は、D-A(『風見鳥』)、D-A-E(『ほら貝の笛』)、A-E(『やじろべえ』)、E-H(『砂時計』)、D-A(『どんぐりのコマ』)となっており、曲間のつながりが見やすい。また、第1曲と第5曲が同じ音で終わる。
  • 各曲の始めと終わりを見ると、『風見鳥』は D-A で始まりD-A で終わる。『ほら貝の笛』の最初の旋律は A から始まり D に行き着く。終わりは上の通り D-A-E。『やじろべえ』の始まりは A-E-D-E で、最後は A-E。『砂時計』は Gis-H-Eで始まる旋律から最後は H-E。『どんぐりのコマ』の最初の旋律は G から D まで上がり下降して A に行き着く。最後は D-A。
  • 最後の D-A の由来をさらに追うと、組曲の第一声「ぎっつぎったん」の D-A-D-E に行き着く。つまり、全体が D-A から始まり D-A で終わるという作りになっている。
  • 『砂時計』の後半部「落ちた時は銀色の」の音型は『ほら貝の笛』の冒頭「海はほら貝を」を引き継いでいる。この順次下降する4つの音を「風が耳うちして」の逆行と考えられるかどうか。
  • また、全体的に長い全音階的な順次進行が多く現れる。これ自体を「風が耳うち」の拡大と見做せるか。
  • 動機の関連性については他にも、『どんぐりのコマ』の「もういいかい」が『やじろべえ』の最初の「やじろべえは」と結び付いている。また、「いちばんおおきなどんぐりゆけ」のバスにあるような半音の上下動も『やじろべえ』で現れており、これは『風見鳥』の嵐の場面に由来するかも知れない。
  • 『やじろべえ』のソプラノに現れる付点八分音符の「影できた」は最初の「やじろべえは」のデフォルメした反行形ではないかと思う。
  • 『ほら貝の笛』の前半は合唱が歌っては休む繰り返しに、徐々にピアノが低音域で挟まってくる。このピアノはコオロギがほら貝の中に這い込んで動く音だろう。
  • 全くないかは確認していないが、合唱が長三和音を鳴らす場面が『砂時計』の前半までない。『砂時計』でも後半にはやはりなく、次は『どんぐりのコマ』の中間部まで待つことになる。
  • 『砂時計』後半で付点八分音符が3回現れ、どれも描写的ではあるがそれぞれ全く性質が異なる。最初の「泳ぐ」は魚の尾の動きのような運動性、「光らせて」には光の瞬くような印象があり、3つ目の「喰んで」では口を開いてものを含むような感覚になっている。