Tokyo Cantat 2023 やまとうたの血脈XII  地球へのバラード~傷みの泉から祈りの声を~(1)

続いて2023年5月4日(木)18:00開演の、三善晃の作品によるコンサート。

  • 混声合唱のための「地球へのバラード」より(1983)
  • 女声合唱のための組曲「月夜三唱」(1965)
  • 混声合唱と二台のピアノのための 歌集「田園に死す」(1984
  • 男声合唱のための「王孫不帰」(1970)
  • こどものための合唱組曲「オデコのこいつ」(1971)
  • 混声合唱曲「嫁ぐ娘に」(1962)
  • C₆H~チェロのための(1987)
  • 童声・混声合唱と2台のピアノのための交聲詩曲「波」(2001)
  • 唱歌の四季」(1983)

タイトルにした『地球へのバラード』の曲を演奏会の最初と途中に差し挟み、アンコールに3曲目の『鳥』を置く構成で、都合8ステージ+αのボリューム。実力派の団体が揃い、ハイレベルな演奏が続くコンサートだった。以下、個々のステージについて

『月夜三唱』

(女声合唱団 ゆめの缶詰 指揮:相澤直人)

正直なところ、相澤直人については youtube で演奏を聴いても何だか鈍いし、諸事情で『ぜんぶ』に触れた時も合唱人の内輪感ばかりという風で、こんなのにいいようにされていては日本の合唱の未来は危うい、くらいのことを思っていたが、直に演奏に触れて大幅に見方を変えられた。

曲の各場面が非常に繊細に捉えられていて、言葉の丁寧な扱いと声の色の精緻な変化を通じてそれが表現されていた。この曲は録音ではいくつか聴いていたけれども、今回の演奏が自分の知るものの中ではベストだった。

反感が無くなった訳ではないので敢えて言えば、曲の全体像というか、結局この曲は何だったの? という部分があまり見えなかった。この点ばかりは動画で聴く相澤の他の演奏と印象が変わらなかった。

『歌集 田園に死す

(Combinir di Corista 指揮:松村努 ピアノ:浅井道子/織田祥代)

今回聴きに行った目当てが Combinir di Corista による『田園に死す』だった。2019年に CANTUS ANIMAE と合唱団 響の2つの合唱団がそれぞれ『田園に死す』を演奏していて、両方とも聴いたのだが、どちらの演奏にもあまり良い印象がなかった。

tooth-o.hatenablog.com

一方、Combinir di Corista については昨年発売されたCD『三善晃の世界』で、『やわらかいいのち三章』がどのような曲なのかをこの団体の演奏に教えられた、と感じていた。

tooth-o.hatenablog.com

そうした事情で、Combinir di Corista の『田園に死す』には期待感があり、是非とも聴きたいと思っていた。

実際の演奏は期待に違わず素晴らしいものだった。まとまりに欠けることもなく、演奏者の自発性もあり、その中で曲の形がはっきりと打ち出されていた。

髙田三郎か、みたいな子音の立て方は謎と言えば謎ではあった。理屈は付ければ付く。「歌集」田園に死す、であること、または楽譜のそれぞれの句が現れる箇所に歌詞だけでなくその句が書かれていることの意義を演奏上も表現したかったのではないかと思う。ただこのあたりの操作感も含めて、やや理が勝ちすぎる面があったかも知れない。