『地球へのピクニック』(1)

ふと思いついて、『地球へのピクニック』の演奏を色々と聴いてみた。まず次のCD

  • 合唱団OMPの1998年の演奏(CD『クレーの絵本/三善晃作品集4』)
  • ハルモニア・アンサンブル(CD『地球へのバラード』)

その他、youtube

など。有名な曲なので他にも幾つも上がっているが、合わせて10回以上は聴いたので、とりあえずここまでで止めておいた。

言ってしまえばそれほど上手くなくても最後の興奮は変わらない曲ではあって、どの演奏もそれなりに楽しんだ。敢えて言うなら「ここでただいまを」の掛け合いの際に女声の「で」がきちんと鳴らないと一気に貧相な印象になるので、その点で残念なものはあった。

それほどこだわらずに聴いたが、この曲はリズムが崩れやすいところがあり、そのためにテンポを微妙に維持できないということがある。この点に少し触れてみる。

下三声の「ここでいっしょに」にすでに罠がある。「でい」の発音が二重母音的になって音符の長さがごまかされる、「いっしょ」の促音が「しょ」の子音と一体化して短くなる、「に」の長さ、次の十六分休符の長さが曖昧になってその後の「ここで」が早く入ってしまうことがあり、最初のフレーズにして既に走っている、といった事態が発生する。特に、十六分休符~「ここで」のリズムパターンはその直後を含め全体に出てくるのでかなりガタガタになりやすい。その次は「おにぎりを」で、「お」「に」ともに発音が曖昧になりやすく、その結果母音のみの「お」の方が短くなりやすい。

しばらく飛んで中間部の音符の長い場面が終わるところ、「ここでただいまを」の直前の「ルルル」では、最初の「ル」の長さが保てずあっけなくテンポが変わってしまう場合がある。さらに「ただいまを」の「ま」にアクセントで強勢を置いた分短くなってしまうということが起こる。

さらに先、四分音符による「ここでただいまを」の、その四分音符が長さを保てないことがある。これは特に「で」の音で発生しやすい。そして「ここであついおちゃをのもう」の「のもう」では母音が変わらないために「の」が短くなり、さらに「もう」も雑に切り上げがちで、そこで速まった勢いのままバスが「ここでいっしょに」で突っ走ってしまう。

そもそもは、この曲の指定されているテンポがかなり速く、丁寧に発音するのが難しい点が問題になる。指定通りに演奏すると口を回すので手一杯の駆け足足踏みのような演奏になりやすい。そうした中で発音をこなし切るために、短くなりやすい音を惰性的に扱うことが起こる。youtube に上がっている演奏はテンポを落としているものが多かったがそれも、このあたりをコントロールできる程度の速さ、という意味はあるだろう。