『無伴奏女声合唱のための かなしみについて』

三善晃は女声合唱のための曲も多数作曲しているが、無伴奏となるとかなり限られる。『かなしみについて』はそうした少ない例の内の一曲。

詩は、やや不快というか、「他人様の感情や人生をお手軽にまとめるな」という腹立たしさがある、と思う。また、個人的な印象になるが「叫びと海」「冷笑と雑踏」といった辺りからは、男性についての話と感じられる。そこで、この曲が「無伴奏」「女声合唱」のための曲であることについて考えてみる。

例えばここに男性の声が入ったらどうだろうか。『三つの抒情』の男声編曲について三善が語ったことを思い出すなら、詩の不快な点はそのまま露出することにもなるだろうか。

ピアノその他の楽器もこの曲には使用されない。こうしたことは、生きていることの感触を極端に抽象化した詩を、その抽象度のまま受け止めるために必要なことだったのだろう。