『人魚』(鈴木輝昭『梟月図』)

鈴木輝昭の曲には興味はあるけれども、好きだとはっきり言えるのは『梟月図』だけのような気がする。第1曲の『人魚』は、この曲集中でもさらに最も好んでいる。
反復する音が波を表現するが、それが八分音符と三連符で重ねられることで劇の大道具かなにかのような、本物の波ではなく物語のパーツのような印象になる。「月を」と、3声がずれて入ってきて、そのあとの「目に」が同様に歌われるのは「一つずつ」の言葉に意味としても対応するが、後半の「照らすことしかしないのでした」のところの「月」が同じようにはいることで、ここの月が冒頭の、死骸の目に嵌った月という意味になるだろう。