『夜と谺』

カメラータ・トウキョウの『夜と谺〜三善晃 合唱の世界Ⅱ』は、90年代の曲をまとめて聴けるありがたいCDだった。合唱団「松江」と合唱団「弥彦」は活動の形態から演奏の精度に限界があるようではあり、またE.S.Pとうたあいによる『五柳五酒』は冒頭の清水敬一による語りがいまいちなかんじはした。演奏については『カムイの風』がもっとも良いと思う。
『夜と谺』の歌詞は宗左近の歌集からとられていて、それまでの三善の作品からの流れで捉えやすい気がする。2群の女声合唱、1群の男声合唱、2台ピアノという特殊で大規模な編成で、楽譜を見ると各群はホモフォニックな動きが多い。声部が多く和音もかなり複雑なはずだが、実際には明快な音として聞こえるように作られているようだ。高音が辛いとか変に入れ込みすぎるとかがなければ想像以上に透明感のある曲なのだろう。