『伝説』

楽譜が出版されて間もない頃に、譜面を眺めて購入を決めた。別に楽譜を見るだけで音が想像できるような能力はないから、単なる直感だった。
高らかに語り上げるような詩ではなく、語りの扱いはおそらく非常に難しい。東混の演奏会で聴いたときにはマイクを使っていたが、語り手と声の出所が違うこと、音量が大きすぎること、合唱の声との音質の食い違いなどで、非常に聴き辛かった。生の声で、静かな詩のことばをはっきりと聴かせなくてはならないとなると、何か特殊な技術が必要なのではないかと思う。
その後、豊中混声合唱団の定期演奏会のCDを手に入れた。CDでは、これらの問題はとりあえず忘れられる。
そうして聴いてみると、もともと分量の多い語りの役割が、非常に重いのが分かる。合唱のテンポやリズムが語りの時間の感覚と対比されるようにしてこの曲が出来ている。語りが主で合唱が従、というと言い過ぎかもしれないが、合唱で最も明確に打ち出される「それはわたくしたちのねがいである」の部分でも歌だけでは成り立たない感じがする。