『レクイエム』

日本フィルハーモニー交響楽団の演奏がCD化されて日本伝統文化振興財団から出たとき、大喜びしたにもかかわらず、実際にはそれほど聴かないまま最近まで過ごしている。聴き方について特定のスタンスを強いられるような感じがして、落ち着かない気分になるから、のような気がする。

CD『三善晃の音楽』の、沼尻竜典指揮、東京フィルハーモニー交響楽団、東京混声合唱団、東京大学柏葉会合唱団による『レクイエム』を、そのような困惑もなく、繰り返し聴き続けている。
聴いてみて、凄まじさ恐ろしさばかりが語られていたこの曲に、合唱の喜びがはっきりとあるのでびっくりした。この合唱を聞くのが快感で、一日一回は『レクイエム』を聴く、時間があれば二、三回聴く、という一週間をすごした。オーケストラの膨大な音は、気を向けさえすればどの音でも聴きとれる感じがあり、こちらが大事な音として耳をすますときまで待っていてくれるような安心感がある(こんなんだからコンサートでちゃんと聴けないのか)。