『彩夢−2本のクラリネットのための』

フォンテックのCD『クラリネット奏者・浜中浩一の世界』3枚組を買って、7分ほどのこの曲以外ほとんど聴いていないというもったいなさ。
5曲からなる小曲というだけで『五つの詩』と、また「夢を通して自分の幼時とめぐり遭い」という三善晃自身のノートかから『田園に死す』と、近しいもののように感じてしまっている。
この2曲は1982年に作曲された『彩夢』より後の曲で、その間に『響紋』がある、ということが気になる。『響紋』を挟んだこれらの曲が、近いと感じる分、違いも測りやすいような気がする。
『五つの詩』について、「行き着く先には何の保証もない」と書いたが、『彩夢』にも同じ感じがあり、しかも『彩夢』ではそのまま死にむかって突っ込んでいってしまいそうな不安感がある。

クラリネットの音は、柔らかいようでいて、でも針が混入しています、というような鋭さがあって、ゆったりとした場面でも緊張感が抜けない。しかもこの曲の冒頭では、そのようなクラリネットの音色の幅を真っ先に聴かせてしまう。恐ろしい緊迫感を持った曲と演奏。