『曼珠沙華』

『五つの唄』は聴いてみてしんどさを感じるところがある。重苦しい情感にずっと浸り続けるためだろうか。前回も引用した

少年時代からの多くの歳月に、白秋の韻律は私の情感を染め、それは影のように私から離れなかった。それを切り離すように――切り離すために――私は私の影を振り返った。

だが、それを「影」と呼び、そして「切り離すために」というあたりで、このような曲になる必然があったのだろうと思う。

ところで1曲目が『曼珠沙華』なのだが、曼珠沙華彼岸花にまつわる不吉・不穏な気分というのは三善に限ったことでもないようで、自分にとっては昔に見たドラマのエンディングテーマに歌われていたのがそのような印象の始めであり、また八村義夫ピアノ曲彼岸花の幻想』を思い出したりもする。

他の詩も似たようなものなのだが、この詩はどうも怪談じみた感触があり、内に秘めた情念というようなものと、それを見透かす何か、という構図になっている。『思ひ出』という詩集がこのような詩ばかりなのか知らないけれども、意図的な選択ではあるのだろう。このあたりと『赤き死の仮面』や『変化嘆詠』を交えて怪奇趣味、というような切り取り方ができるかも知れない。