終戦の日に三善晃を流してしまうという

2020年8月15日から1週間の限定配信で、『響紋』のピアノ・リダクション版が聴けるというので聴いてみた。

 とりあえずの感想として、『響紋』は『レクイエム』よりもオーケストラの役割が大きい曲だったんだろう、ということを思った。童声合唱という音域の問題や、「かごめかごめ」の旋律が主体となることから合唱パートが薄いこともある。また、「ここは金管だから」「打楽器だからこそ」という効果と意味が、当然ながらピアノだけになると見えづらくなる。結果、ピアノから激しさ、厳しさ以外の表情を聴き取るのに慣れが必要と感じられる。『響紋』は特に録音が入手しやすく、昔から繰り返し聴き続けてきた曲なので、曲に対する自分の思い入れとの差異がやっかいになる。

楽曲への感想はこんなものだが、これを「終戦の日に」といって流されることについてはどうなのか、という気持ちがある。

この曲の楽譜は店頭で捲ってみただけなのでうろ覚えだが、三善晃は前書きでアメリカの同時多発テロ事件について触れていた。同時代の、世界における争いへの意識があったということなのだが、実際の扱われ方は国内に閉じた、20世紀の振舞いに退行した様子に見える。