チェロ協奏曲

1996年に第2番として『谺つり星』が書かれたので「第1番」ということになった、1974年のチェロ協奏曲。つまらない話だが、三善晃の最高の作品、と訊かれたらこの曲を挙げると思う。その次は『プロターズ』。合唱で、と言われたら『狐のうた』にするだろう。

冒頭から素晴らしい。マリンバによる入りを武満徹が対談本で褒めていた。

などと言いつつ自分は不埒な聴き手と言うしかない。この曲を聴きながら、今どのあたり、どのような部分、ということを思いもしない。ただチェロの音が聴きたい。この曲で聴くときに、チェロの音は綺麗に鳴らない時も含めて常に美しい。鳴らしづらそうな音の鳴らしづらさ自体が表情を持ち表現になってしまう。

近頃はこの曲のCDは手に入りづらいのだが、代表作の一つでもあることだし、そろそろ新しい演奏が出てもいいのではないかと思う。