『だれもの探検』のこと

今回何度かCDを聴きながら楽譜を眺め、詩を読み返してみたが、この『だれもの探検』に対して実に容易ならざる曲という印象が強まってきた。5曲の組曲で楽譜によれば約13分、甍の演奏でも15分ほどの、決して大規模とは言えない曲だが、きちんと演奏するなら難度はおそらく『路標のうた』や『遊星ひとつ』よりも上だろう。その難しさが本当の友情の困難や尊さと結ばれているのがこの曲だろうし、ついでに言えば名門校の仮借ない練習を見込んだものでもあるのだろう。

とにかく、甍のCDで聴くとかなりの部分で低声がなにやらごそごそやっている、という感じがひたすら続く。それが解放されるのは4曲目『発見のうた』の後半くらいになる。これもある程度はそう作られているということだと思うのが、ここにほとんどナイーブというのに近い直截な訴えかけが現れることだ。きっと、とぼけた感じや重苦しさや屈託はここを鮮やかに響かせるためにある。そして「志在守朴」と終曲において総括される。