2023-01-01から1年間の記事一覧

『五月』と『いづかたに』

「グリークラブ・ソングセレクションⅠ」に収録された2つの男声合唱曲。作曲家が作品として扱わなかった曲が変に愛唱されるようになるとすればあまり良いこととは思わないが、それはそれとして。 『五月』と『いづかたに』はともに、東京男声合唱団の1964年5…

三善晃と『五月』の詩

音楽之友社の「グリークラブ・ソングセレクションⅠ」に三善晃の男声合唱曲『五月』が収録されている。早稲田大学コール・フリューゲルの演奏を youtube で聴くことができる。 グリークラブ・ソングセレクションⅠ - 音楽之友社 五月 - YouTube 「日本男声合唱…

『田園に死す』について 阿部亮太郎氏のツイート

だいぶ前のことになるが、作曲家の阿部亮太郎氏が授業で『田園に死す』を取り上げているとツイッターに書いていた。 ここ数年の、後期の楽曲分析の授業。三善晃《田園に死す》を取り上げている。寺山修司の短歌5首からなるこの曲、どう作曲者が読み取ってそ…

曲集『街路灯』のこと

tooth-o.hatenablog.com 「乖離」というのも日頃使わない言葉だが、これは曲集で扱われた詩に共通して現れるものでもある。 「なくしてしまったふるさと」(『マルメロ』) 「幼年を失くしたもの」(『雲』) 「ふたたび/めぐりあえなくなった日」(『オル…

『街路灯』のこと

今年はコンクールの課題曲になったこともあってか、『街路灯』の話題をいくつか見かける。そのこと自体は良いのだが、詩の言葉の現れる順番が、のような話が出てくるのは国語力的にいかがなものかという気持ちになる。「みんなすてよう/めぐりあわないため…

三善晃の『空に小鳥がいなくなった日』について(2)

tooth-o.hatenablog.com 前回引いた4行の前に、三善晃はこのように書いている。 谷川俊太郎さんの詩。 初めから、その詩語のなかにいた。 当初、組曲自体のタイトルを『空に小鳥がいなくなった日』としていたことから、ここで言っている「詩」も『空に小鳥が…

『Agnus Dei』(Samuel Barber)

自身の歌い手としての活動は全く貧しいものだが、それでも長く続けているとこのような曲を演奏する機会が巡ってきたりもする。が、酸欠で知性が飛ぶのか、しょうもない数え間違いが練習では頻出している。対策を兼ねて考えていた内輪向けの簡易的な解説を書…