『《黄金の魚》1923』

『クレーの絵本 第2集』の3曲目。当時何を思ったわけでもないけれども、初めて実演で聴いた三善晃の曲だと思う。

ABABコーダ、という形をしていて、2回目のAの始めの音量とBの最後のトップテナーの音くらいが最初のABと2回目のABの違いになっている。

コーダの部分からは特に、曲の密な作りが感じられる。セカンドテナーの「どんなよろこびの」がAの冒頭「おおきなさかなは」の再現なのははっきりしているし、テナーの「どんな」「とけて」「なみだが」の動きは「ちいさなさかなは」から来ている。「ふかいうみにもひとつぶの」は「ちいさなさかなは」の跡の「ルルル……」を引き継いでいるだろう。ついでと言うのでもないが、Bの後半に出てくる「やしないとして」は「ちゅうくらいの」と同じ。

これらは音として結び付いているだけではなく、「おおきなさかな」に「よろこび」が、「ちいさなさかな」に「なみだ」がつなげられている、ということでもある。そう見ると、繰り返しの部分も一方は「おおきなさかな」目線、他方が「ちいさなさかな」目線ということかも知れないし、少なくともそのような方針で演奏することはできるだろう。