『プロターズ』

『三つの海の歌』のことを書いている間に思い出したのが、CD『「黒の星座」三善晃:ギターのための作品』のプロデューサー・ノート、プロデューサー・ノートで『五つの詩』について書かれた「死の淵に誘う」とか「三善晃らしい一番恐ろしい、深淵の音楽」という言葉だった。

このCDの中に『二台のギターのためのプロターズ』という曲が収録されている。『三つの海の歌』と同年の曲だが、三善晃の曲の中で聴き手にとって最も難しい曲ではないかと思う。個人的には、ギター2台で演劇をやる、ということだと思っているが、得体の知れないことには変わらない。この「最も」というところで、三善晃室内楽曲で一番優れた曲かも知れないとも思う。

『プロターズ』には「遠景より無景へ」と副題がつけられていて、『遠方より無へ』の書名もここから来ている。そういったことや、70年代の楽曲の意味なども含め、この曲は注目されるべきだろう。