ふと、『方舟』のこと

木下牧子の『方舟』について。1曲目『水底吹笛』で「みなぞこにすわれば」、2曲目『木馬』で「木馬は空を渡っていった」「木馬のような私の心」、4曲目『方舟』では「さかさまになって空を歩こう」のように、そもそも私の心は地上にない、ということ。

で、曲の配置に沿ってみるなら、「ゆめ」「のぞみ」があれば地上で生きられるかも知れない(一方でその破綻も予告されている)、から始まって、「やさしいひと」が「金の輪のてのひら」でつないでいてくれれば私の心は木馬のように空を渡ってはいかない、が、「こころ開かぬまま」に分かれてしまう、と来て最後の『方舟』に至る。

表題曲となる『方舟』は、船団を組んで旅立っていった生き物たちのように自分も地上を捨ててしまいたい、「愛」さえもういい、と歌う。「あすののぞみもむなしかろう」が成就してしまうということで、かなりぞっとする構成になっている。