『クレーの絵本/三善晃作品集4』

ちょうど10年前のCD。『詩の歌』、『クレーの絵本 第1集』、『地球へのバラード』の3つの曲集が収められている。
『詩の歌』の演奏が正確で、清潔感がある。曲の細部に安心して耳を向けられる。『クレーの絵本』は第3曲『幻想喜歌劇「船乗り」から格闘の場面』でところどころ歌い切れていない部分があるのが残念。第1曲『階段の上の子供』には自分に「こうならいいのに」という夢のようなものがあって、この演奏はそこからずれる。
このCDの『地球へのバラード』の演奏はいろいろ思うことがある。
初めて聴いた時から音の下がるのが辛かった。『私が歌う理由』の、ソプラノの歌い出しから先行き不安な声だが、「目をそむけうずくまる」のあたりでは半音程度は低くなっている。『沈黙の名』の「ものの名は」から続く「夏よ」も同様。今も気にしだすと「これを聴いていていいのか」とか思う。
その割には、というのが適切なのか分からないが、ホールの響きのためか、合唱団の歌の向こうで不思議に澄んだ和音が鳴っている。