『梟月図』のことを少し

鈴木輝昭は興味があると言えばある、くらいの関心の持ち方しかしていない作曲家で、合唱曲のCDを数枚持っているが器楽に関しては全く知らず、合唱曲でもよく聴くものは少なく、好きだと言えるのは『梟月図』と、あとは『女に』の第1集・第2集くらいだ。

『梟月図』は選ばれた詩に対応して明瞭な形式感をもち、見通しの良さと新鮮さ・鮮やかさがある。所有しているCD『ティル  ナ ノグ 鈴木輝昭合唱作品集』を時々取り出して聴くのだが、ぴしりと形が決まって心地よい。

形式の強さは透明感のような印象をもたらし、詩と曲の印象を結び付ける。荻久保和明の『透明』などはこの感覚に近いが、まだ幾分脂っこさが残る気がする。

楽譜の序文などでの「中有」のような言葉の扱いを見ると、実はあまり詩の内容が分かっていないのではないかという疑念が少しあるのだが、それほど問題にならないような詩の選択になっているように思う。それよりも、言葉のイメージの素直な延長として音を選んでいる感じがあり、屈託なく音に気分を託せるような気になる。この曲に感じる好ましさの一因だろう。