『地球へのバラード』の前書き

最初は『三つの抒情』か、『地球へのバラード』か、『虹とリンゴ』と思っていたけれども、思い入れからしたらこれか、と。
この曲の解説で常に引かれるのが「人間をふくむ生命の星としての地球への愛を歌いたい」という楽譜の序文の文句。で、これは何だ、というあたり。
『五つの童画』でも、「人間と地球全体をくるむ愛を歌う」という話になっている。悪いとは言わないがなぜこうなるのか、というか、三善はむしろ「悪いとは言わないが」とか思わなかったんじゃないか。『童画』でもある意味突っぱねたのに、またこれか、と。
なぜこういうテーマが出てくるか、と言ったら要するにもめないため。放送局は苦情をねじ込まれたくないし、合唱団は内部をまとめなければならない。そこで、もろもろの対立を回避するために「地球全体」とか「愛」とか言っておく、ということになるのだろう。もう少し言えば、こういうテーマを出すとき、背後にあるのは「対立なしに、痛みなしに、人は手を取りあえるのではないか」という期待だろう。
けれども三善はそれを蹴っ飛ばす。