三善晃入門?

少し前のことだが、たまたまそのような文字の並びを見かけた。自分などそれほどマニアックでもなく、何か特別な知見があるわけでもないが、とにもかくにも延々と三善晃の曲を聴き続けてはきたので、少しくらい挙げてみてもいいかと思い、考えてみた。

「入門」と言っても人それぞれに背景があるだろうが、全く手掛かりのない中で最初に勧めるとしたら、ギターのための『五つの詩』だろう。この『五つの詩』は入門にして既に深淵、聴きやすくかつディープな、「三善晃を聴く」という感じを植え付けてくれる曲だ。芳志戸幹雄や福田進一などの録音があり、その点でも聴きやすいだろう。その次は、親しみやすさの面からは『四つの秋の歌』か『海の日記帳』、『五つの詩』の雰囲気を追っていくなら『彩夢』を聴いてもらいたい。各曲は、『四つの秋の歌』なら初期作品あるいは歌曲、『海の日記帳』は80年代の後半以降や子供のための作品、『彩夢』は『レクイエム』から『響紋』に至る時期と、それぞれが年代や曲の種類の面でその先に広げていける曲だと思う。

また、クラシックを聴く人なら、この辺りに加えて初期の『ピアノソナタ』や『ヴァイオリンソナタ』などを並べて、あとは時代順に進めていけばいいかと思う。現代ものまで守備範囲というならさっさと『チェロ協奏曲』(第1番)や三部作・四部作に行け、となるだろう。

合唱曲についてはここまでわざと外しておいた。合唱曲からは合唱曲にしか広がらない印象があるからだが、要望がありそうなのもこちらかも知れない。ということで挙げてみるなら、最初の1曲は『地球へのバラード』がいいだろう。この曲も受け入れやすく、それでいて心の深いところに一気に入り込んでくる。『私が歌う理由』の鋭利さから、心情に密着してくる『沈黙の名』に続くあたりはずるいとさえ感じる。次に谷川俊太郎の詩による曲をいくつか聴けば、その先は気の向くままで大丈夫だろう。他にも有名な曲は色々あるが、それぞれいきなり聴くには難しい面を持っている、と思う。