なにわコラリアーズ  オール三善晃コンサート

平成31年1月12日 紀尾井ホール

  1. 『三つの時刻』
  2. 『クレーの絵本 第2集』
  3. 『縄文土偶
  4. 『五つのルフラン』
  5. 『遊星ひとつ』
  6. 『三つの抒情』(福永陽一郎編曲)

有名な男声合唱団であるなにわコラリアーズによる、三善晃の作品を集めた演奏会。各曲はそれほど長くはないのでコンサートの演奏時間としては案外普通なのだが、内容的にはちょっと負担が大きかったかも知れない。初めて実演に接する曲が多く、その点では興味深かった。

演奏は、魅力的である一方、色々と問題もある、というものだった。良いと思えたのは演奏が今この場で行われている感覚、練習で固めたものをただ再現するような退屈な完成度とは違う、その時点その時点で意図を持って音を発するから、聴く側も今その時に音を聴かなければならないという演奏のあり方だった。一方で、ではそのような演奏を通じて何が演奏されたのか、というところにはやや疑念のようなものもあった。「曲のこの部分はこれを表現しているはずだが、演奏はそれをしていない」というような気分になることが何度かあった。また、このような演奏の指向は指揮者とピアニストの間では共有されていたようだが、合唱団にはあまり通じておらず、また指揮もそこを通じさせる技巧はなかったように思う。だから無理矢理全部の拍をひっぱたくような指揮になって肘を痛めたりするんじゃないのか、などと意地悪い感想を持った。

好ましくない面としては、高声側が好き勝手に歌ってバランスが崩れ、バリトン・バスがなにをしているか分からない、という印象があった。ただしこれは単なる無神経とは別の見方ができそうでもあり、編曲の問題も含めて考えてみる必要がある。

また、リズム感があまり良くないと感じた。高声は声が乗り切るために音符の長さを余分に取ろうとするところがあり、一方の低声側は発音をこなすのに苦労して音の長さを保てないことがよくあった。こうしたことから『ケトルドラム奏者』『死と炎』などは大分ばらける感じがあった。指揮者も『だれの?』の複合拍子をあまり綺麗に処理できておらず、落ち着かない演奏になっていた。

これら不安定な部分も含めて、三善晃男声合唱曲の特徴や難しさについて、また各曲の今まで気づかなかった部分について、思うところの多い演奏会だった。