『ノエシス』

ノエシス』の初演が1978年で、『クレーの絵本 第1集』と同年だったのだが、この2曲を並べて考えたことがなかった。そんなものだとも思うが。

この曲を収録したCDを持っているのだが、確認してみると20年前のものだった。武満徹の『トゥイル・バイ・トワイライト』を表題として、吉松隆の『朱鷺によせる哀歌』、松村禎三の『ピアノ協奏曲第2番』という、充実した内容。ブックレットの片山杜秀は理知的な風に見せて実際はポエムに逃げた印象。

先日『クレーの絵本 第1集』の楽譜の前書きを読み直し、また『遠方より無へ』でも『クレーの絵本』について書かれたものを読み返してみた。この両方で「感覚の色」という特徴的な言葉が使われているが、この言葉は絵が意味を失って色の並びとだけ感じられる状態を言っているように読める。

絵は多くの場合何かの絵であって、一目瞭然の場合もあればその何かがタイトルで明示または暗示されていたりする場合もある。が、その「何か」は実際はそこにはなく、あるのは絵の具なりで色が配置された平面などでしかない。絵がこのように見えている状況がおそらく「感覚の色」ということの意味だろう。そしてここからやはりもとの「何か」が見えるとき、それを見させる作用とは何だろうか。

と、書いてみると、『ノエシス』の解説との類似が見えるだろう。